I'm Fried

スカパーでたまに「TBSチャンネル」というものを見る。

これは主に昔のTBSの懐かしい番組を放送しているのだが(例:「風雲たけし城」)、今日見ていたら「サウンドインS」という番組をやっており、いきなり冒頭で伊東ゆかりイーグルスの「ホテル・カリフォルニア」を凄い日本語の歌詞で歌い上げていてのけぞった。ちなみにレギュラーは松崎しげる、タイムファイヴ、サーカス。約30年前くらいの番組なのだろうか、詳しいことはよく知らないが、洋楽のカヴァーを寸劇を交えつつゲストを交えて歌う、という実に楽しい番組である。

そういえばこの番組、この間も全く意識せずに見ていたら西城秀樹が「とても尊敬しています」とか言ってバリー・マニロウ超リスペクトな感じで「コパカバーナ」を歌っていた。そういう時代の番組である。でも、何か全体としてちょっと気取った感じがしていて、逆に余裕があったんだなあこの時代は、と思わず唸りそうな、そういう感じの「エンターテイメント」たりえている番組なので面白い。

でも昔は結構洋楽のポピュラーヒットを日本人が番組内で歌う、という企画は結構あったなあ、と思い出すのである。例えばNHKの「レッツゴーヤング」にもそういうコーナーがあって、私がいまだに強烈に覚えているのが多分86年くらいの話であるが、少年隊がThe Blow Monkeysの「Digging Your Scene」をこれまた凄い日本語詞で歌っていたり、The Style Councilの「Strength Of Your Nature」に合わせてバク転したりしていた、というものがある。youtubeとか探すとあるのかも知れないが、我が家の脆弱なネット環境では無理なので探していただきたい。ネタか、とか嘘か、とか思われるかも知れないが、本当のことである。しかも何故私がそこまで詳細に覚えているのかと言えば、当時ブロモンもスタカンも聴いていたので物凄いインパクトだったのである、絵的にも。

最近は流石にそういう番組ってあるのだろうか。「ミュージックフェア」はどうなのだろうか。そういう企画、今あっても面白いと思うのだが。でもこんなに色々細分化が進んだ今の世の中では難しいのだろうか。とか色々考えると、昔は良かったなあ、とかそういう大雑把な結論の前に今のテレビ番組の作りって随分変わってきたんだなあ、としみじみ思わせられたりする。それが良いのか悪いのか、それは私にはわからないが、時代のニーズに応えて作られていくのがテレビ番組だとしたら、何かこう、今って気持ち的な余裕とかが全体的には失われつつあるのかもなあ、と無責任に考えたりしたのであった。

ということで小6の時にブロモンだスタカンだ、とか言っていた少年は32歳になってThe Stoogesの「The Weirdness」を聴く。サードアルバムである、約30年ぶりの。そっか、「Raw Power」はまた違うもんな、とか今更ながら思わせられた次第である。The Stoogesのことを少なくとも月に一度は考え、アルバムも同じくらいの頻度で聴く私としては、実に待望のアルバムである。で、この作品であるが、結論から言えば凄く良いロックンロールアルバム、なのである。と同時にThe Stoogesなのですか・・・?という疑念も頭を擡げてくる厄介なアルバムである。Steve Albiniのレコーディングによって異常に生々しいドカドカしたロックンロールアルバムに仕上がっていて実に頼もしい。とくにドラムスの音の凄さはここ最近聴いたことのない凄まじさなので腰が抜けた。大体がリフの1つか2つで全てが構成されているような、単純、そして荒っぽくドライヴする強烈な音楽である。そう、そうなのだ。しかし、だがしかし、The Stoogesのファースト、セカンドにあった強烈なフック、決してポップではないのに不思議にキャッチー、という側面は、ない。The Stoogesと聴けば思い出されるのが「TV Eye」のギターのイントロだったり、「1969」のもんどり打って転がるドラムに絡むギター、とかそういうものだと思うのだが、そういう感じのロックンロールではない。だからちょっと寂しく思ったりもするのだが、考えてみれば60代にならんとする方々が、ここまで無愛想なぶっきらぼうなとんでもない音で鳴らされるロックンロールをやっているのだから、逆に不気味で恐ろしい。昔とは違った意味で凶暴化しているというかなんと言うか。だから「The Stoogesの作品」としては若干の物足りなさがあるのだけれども、何度も何度も聴いて楽しむであろうことは明らかな作品である。ちなみにそんな猛々しい音の怒涛の中でIggy Popのヴォーカルは30年前とは違った意味で凄味があって、そしてとても落ち着き払っていて、そこがまた不気味である。このままドンドンThe Stoogesとして新作を出し続けてもらいたい、と期待させられるのであった。再結成作にありがちな「あーやりきっちゃった感」をまだまだ全然微塵も感じさせない不気味なアルバムである。