Say Yes

そういえば日に日に日は短くなって秋に近づいていっている、というのに「夏らしい」イヴェントは8月に目白押しなわけである。こう考えてみると、「夏らしい」とか言って感じられる時期というのはとても短いのだなあ、とぼんやりと思う。

何か「夏」と聞くと刹那な感じがするのはそういうことも影響しているのかも知れない。蝉はほんの短い期間だけ地上で鳴いてすぐに召されるわけだが、実は夏に賭けたりする人間共も蝉と同じように刹那な存在なのかも知れない。「この夏こそ!」とか「夏が勝負!」とか言ってぱーっと色々やってもすぐに秋に飲み込まれていってしまうわけである。

まあ別に夏があまり好きではない私としては、何ら思うところはないのだが、意外に夏の終わりは近い、ということは肝に銘じて生きなければいけないのかも知れないのである、ということは覚えておいた方が良いのかも知れない。

しかし意外に夏だけではなく、人間の一生というものも実は夏と同じくらい、蝉と同じくらい刹那なものであるのかも知れない。と強烈な暑さの中無常感に駆られた夜はTim Burgessの「I Believe」を聴く。御馴染みThe Charlatansのヴォーカリストの、2003年リリースソロアルバムである。ええ、そりゃあThe Charlatansは大好きで聴いてました。少なくとも96年くらいまではガンガンに聴いてたなあ。「Over Rising」って曲が大好きでしてねえ、とThe Charlatans思い出話をしたいわけではなく、このアルバムである。Linus Of Hollywoodさんが全面的にバックアップした、というのも最初は不思議な気がしたものであるが、こうして聴いてみるとバンドでは決して感じられなかったTimさんのヴォーカリストとしての魅力が全開になっていて感心する。結構アーシーなバンドサウンドながらホーン隊やらストリングスやら小技が効いているところも魅力だが、ヴァラエティ豊かなナンバーが揃っていて単調になっていないところが一番の魅力なのだろう。そして全体的に開放感のようなものが感じられるのが実に素晴らしい。何か大らかな感じが心地よい、というか。そういうサウンドに乗せたTimのヴォーカルもThe Charlatansの時と変わらぬ声ながら、ファルセットやら何やら表情豊かで、正直ここまで歌えるヴォーカリストだとは思っていなかった自分を恥じる気持ちで一杯である。