Falling And Laughing

ということで気がつくと9月になっているのだった。それとは大して関係がないのだが、青空を見たのはいつが最後だったっけ、と訝しく思わざるをえないほどの曇天続きの昨今である。

何せいつ雨が降り出すとも分からない空の下で暮らしているというのは、別にとくにカラリと晴れた青空だけが好きです、みたいな感じではない私ではあるが、流石に何だか悶々としてくるものである。しかも午前中雨→その後突如曇りながらも晴れて死ぬほど蒸し暑くなる→また霧雨、みたいな感じだと体にカビ生えるわ、と誰かに当たりたくもなるが当たったところしょうがない。

そして挙句の果てにはこの曇天の下、私は歯医者通いなわけである。この曇天、そしていつ終わるとも分からない歯の治療、挙句の果てには風邪気味、という中、ふとギリシャ銀行のカウンターの中を見ると真っ黒に日焼けした男性が働いている。そこで私はおもむろに中に入り、その男性に尋ねてみた。

ギリシャは今どんな気候ですか」「ギリシャは快晴で、毎日がずっと夏を感じる日ばかりです」

そこで私は次の日、ギリシャに向けて旅立ち、そこにしばらく滞在することにしたのだった・・・。

とLeonard Cohenのエピソードに途中から突入してしまうほど、何だかしゃきっとしない日々である。まあ、せめて湿気でも少なくなれば、と願うばかりである。

せめてカラッとした青空ジャケットのOrange Juice「You Can't Hide Your Love Forever」を聴こう。ネオアコって言われるジャンルの名盤紹介ではかならず出会う、彼等のファーストアルバムである。そう、ネオアコって言葉がまた結構罪な奴で、明らかに音楽性が違うはずのバンドまで一緒くたになっちゃうから、誰かAztec Camera聴いてその勢いでJosef K聴いて悲しくなった人もいるに違いないのだ。話がそれたがこのファーストを最近買いなおした(売っちゃったのもイマイチ信じられない話なのだが)ので聴いている。ギターのカッティングとかは結構快活なものの、よく聴くと何だか変なコード進行だったり、全く持ってどこに向おうとしているのか意図が読めないギターソロとか、そういうのが実はがっつりと織り込まれている。しかしその謎の違和感に止めを刺すのはEdwyn Collinsの、まあ確かに美声なのだが、どうにもこうにも粘着質で引きずるようなヴォーカルだったり、このアルバムを最後に脱退したJames Kirkの、もう下手か上手いかで言ったらガチで下手なヴォーカルだったりして落ち着かないことこの上ない。でも、それら謎な要素が絡み合って意外にクセになってしまうのである。加えて、やりすぎじゃないか、と当時言われていたホーンや女性ヴォーカルなど、結構凝ったアレンジでそこら辺も鑑みてみると実はこれは彼等なりのソウルミュージックの解釈だったのではないか、と思えてくる。Al Greenのカヴァーとかやってるわけで、そういう見方になるとEdwynのこのヴォーカルも実はソウルフルなんじゃ・・・、となってくるから気の持ちようというものは実に大切である。確かに変なアルバムではあるが、それを強引に纏め上げるポップなメロディには脱帽するわけで、そこら辺がこれの名盤たる由縁なのかな、と思ったりするわけである。今更ながら。ところでScritti PolittiのGreen氏は本当に参加しているのですか。クレジットないんですけど・・・。