Imagination

ということで昨日のNag3では歯の痛みに苦しむ私が世の中に向けてありったけの憎悪をぶちまけてしまったわけであるが、結局あの後も歯の痛みは悪化するばかりでほとんど眠ることができなかった。

ということでこりゃかなわん、となり今日急遽歯医者に予約してこの苦しみを訴えてみたらば、あっさり「神経取りますので」となったのだった。

実に麻酔を打たれるのも久々である。確か最後に麻酔を打たれたのはThe Smithsの「The Queen Is Dead」The Queen Is Deadが出た頃だったと思うから約22年も前の話か。だからほとんど記憶なぞないのであるが、ぶすぶすと麻酔を打たれてみるとああこんな感じだったっけ、となるのが面白い。

しかし麻酔が効いていると痛みは全くないのは良いのだが、耳慣れぬ、いつもの治療では耳にせぬノイズが襲ってくるからかなわない。加えて何だかドリルのような、掘削機のようなものでごごごごごとやられるのだが、これの振動が物凄く、そのイルマティックなヴァイブレーションが後頭部を刺激しまくるので何だか歯と関係ないようなところまで違和感があるような状態になった。

ということでこれ途中で麻酔が切れたらどうしよううわあああ早く終われ早く終われ、とか思っていたらあっさりと終了したのであった。お陰で今では全然歯も痛くないので昨日のような悪態をつくこともない。というか、昨日のあの悪態はよっぽどの苦しみの表れだったんだろうなあ、と自分で分析してしまうくらいである。

しかし歯を削っているというか掘っているような時の、あの振動は物凄くイルマティックなヴァイブがビンビンだったぜ、とさして意味もなくMC口調になりながらBill Frisellの「History, Mystery」を聴く。何でもマルチメディア作品に音楽をつけたものを膨らませた、スタジオ録音とライヴ録音を混在させた2枚組みである。私は彼の作品全てを聴いているわけではないのだが、まあNonesuchからリリースされている彼の作品に悪いものはないのでこれもそうであろう、ということで聴いているのであった。はい、その通りでございました。基本は非常にゆったりとした演奏の中で彼の特徴的な、儚いようでいてそれでいて永続性のあるようなトーンのギターが堪能できる作品である。8人編成のバンドなので色々な楽器の音色が聴こえては去り、またやってきたりしているが基本的には相変わらずの、彼の隙間の、というか空間の多い作風に変わりはないのである。Thelonius MonkやLee Konitzなど数曲カヴァーも含まれているが、9分近いSam Cookeの「A Change Is Gonna Come」は泣ける。そう、全体的に叙情的な感じではあるのだが、このゆったりとした空気の中でも各楽器の間での殺気に近いような緊張感はピーンと張り詰めたように存在しており、それがライヴならではの醍醐味なのかも知れないのだが、単にぼへーっと聴き流そうとするこちらをそうはさせまい、と制止しているような、そういう作品なのであった。ヴァイオリンやヴィオラ、チェロの音色がこの中では非常に良いアクセントになっていてBillさんのギターとナイスなマッチング具合を見せているので、それも聴きものである。ちなみにJohn LurieのこのサントラAfrican Swim and Manny & Loを想起させるような軽いエキゾティックな感じもあり、でいちいち引っかかるところが沢山用意されている作品でもある。