Losing You

(もうなんか1日ずれたままずっと更新すべきなのか、と思う今日この頃です)

夜暑いから窓を一箇所だけ開けて寝ようか、とすると近所の土手を延々エンジンを変に吹かしながら爆音で往復しているバイクの野郎がいて、うるさくて頭に来たりすることって私だけではないはず、と異様に限定的な状況だが、もし貴兄貴女がこの状況に置かれたら絶対に頭に来るはずだ。

苦情を言ってやりたいが何かこちらに害が及ぶと嫌だし、相手はノーヘルなのだからむしろ一思いに何か大きくて固いものでもぶつけて転がしてやったほうが全て丸くまとまるのではないか、とかそういうキワキワな発想にしか至らなくなってくるのである。

嗚呼、ダメだ。ダメだ。こういう発想のままだから通り魔はいなくならないし、凶悪な犯罪だってなくならない。だからそれを罰するための死刑だってなくならないのだ。多分人間は潜在的に残酷なのだけれどもそれを抑えて生きているからこそ人間なのであって、それをむき出しにしちゃあ人間の社会というものは成り立たなくなるのだ。

でも、マジでいまだにぶろんぶろんとエンジン吹かしながらいるわけで、手元にあるPILの缶入り「Metal Box」は凶器になりうるか吟味し始めたくなってくるのだ。

イライラしてはいかんなあ、と自らを抑えるべくRandy Newmanの「Harps And Angels」を聴く。多分、歌ものの新作としては9年ぶりである。またしてもNonesuchからのリリースである。何か最近ANTIとNonesuchからのリリースはほぼレーベル買いしているような気がして恐ろしい。さて、このアルバムであるが、私は実は彼の歌声が苦手なのである。ソングライターとしては本当に素晴らしいのだけれども、何かこう、彼のヴォーカルが上手いとか下手だ、とかを通りこしてちょっとなあ、というどうにもこうにも理由がつけられない感じで苦手であった。しかしてこの新作では、良い具合に枯れていて、しかしそれでもまるで不良ぶっているかのような歌い方、歌声に聴こえ、何か遂に、遂にしっくりくるようになったのだった。こうなったら最早無敵な作品であるのは間違いない。プロデュースはMitchell FroomにLenny Waronkerという何か凄いコンビだし、バックにもGreg LeiszやPete Thomasというありそうでなかったメンバーがいるわけで、そして勿論曲は悪いわけがないわけで、今回は上記のように感じられるナイスなヴォーカルにカントリー色を増したバックで実にツボである。何か彼くらいの大御所になればもっとがっつりとしたアルバムになっていてもおかしくないのだが、良い具合に肩の力が抜けた、そしてどこか微笑ましい感じの音になっているのには不意を衝かれた、というか意外な展開になっていて、それなのに逆に凄味が感じられる、という実に魅力的な作品になっている。アルバムの時間も短いのだが、ギュッと凝縮されていて過不足ないまとまり具合である。ベテランがベテランたるのはこういう力が抜けたところで凄いアルバムを作ってくるからなのだ、という怖さを思い知らされました。