Flume

2日ほどご無沙汰しておりました。激務&深酒でお休みしておりました。

しかし先週は何だか大変だったのだが、まあ仕事がマザファカだったのは言うまでもないが、別にそんなことはどうでもよく、リアルに大変だったことがある。

ある日せんべいを食べた後、毎度のことなのだが私の奥歯にはよくモノが挟まるのでガムを噛んでそれを取ろうとしていたのだった。そうしたら、いつもとは違う違和感に襲われ、集中的に奥歯の一点でのみ強く噛み続けてみたのだがガムを取り出してみたら何だか固いものがいかにも取れました、的な風情であったのだ。

それ以降、何だか舌で上の奥歯を探ってみるとぼっこりと風穴のようなものが空いているのがわかった。つまり、詰め物が取れてしまったのである。ということで歯医者に行かなければいけない羽目になってしまったのである。しかしここで一つ問題があって、実は私は20年間歯医者に行っていないのである。最後に歯医者に行ったのはWireの「A Bell Is A Cup...Until It Is Struck」A Bell Is a Cup...Until It Is Struckがリリースされて、そして聴きまくっていた頃である。だから中学生だったわけで、中学校のすぐ脇にある歯医者に通っていたのである。今、その歯医者があった一画はすっかりマンションになってしまっている。従って新規開拓をしないといけないわけである、歯医者の。

レコ屋の新規開拓はノリノリなのであるが、病院の、しかも20年間無縁だった歯医者の新規開拓だなんて、と大層気が重い日々である。一発驚異的な自然治癒力で、とか馬鹿な夢想が頭を過ぎるが、歯に関してはそれは無理である、ということを知らないほど馬鹿ではない私であるからして、今週は歯医者にすごすごと行かざるを得ないであろう。

しかし今年に入り、耳鼻科に皮膚科、ついでに歯医者、と1年の半分が過ぎたあたりで3種の病院に行く羽目になるとやはり医療費の問題とか、色々国の無策ぶりについて真剣に考えざるを得なくなる。国を動かす人間は金を持っていない人で、健康ではない人でないときちんとした国の動かし方は出来ないのではないだろうか、という自論を固めつつある昨今の私である。

Bon Iverの「For Emma, Forever Ago」を聴く。ファーストアルバム、なのだろうか。Justin Vernonという方のソロユニットである。UKでは4AD、USではJagjaguwarからのリリース、というだけで間違いがないような気がするが、やっぱり間違いはない音である。基本的にはアクースティックギターの弾き語り系、というシンガーソングライターのアルバムはかくあるべし、的作品かと思いきやそれだけではなく非常に控えめな打ち込みのドラムが鳴っている曲もあったり、結構アイディアは多彩に詰め込まれていてどの曲もそれぞれ何だか靄に包まれたような空気感が共通しているものの、意外に印象は異なる。しかしどの曲もJustin氏のファルセット声がばしっと全体を締めている。中には多重録音で彼の声がこちらに思いっきり迫ってくるような感じの曲まであって、実に自分でもポイントをわかっているのであろう、という気にさせられたりする。Neil Youngを想起させるような高い声であるが、これがですね、猛烈に哀感を湛えた声でやられる。普通に良い曲と控えめなバッキング、という実にシンプルな作品であるが、この声と空気感で一度聴いたら忘れられないような強烈な印象をこちらに残していく。世の中色々な音楽はあるし、どんな音楽でも良いものは良いのであるが、このようにシンプルだけれどもそれでも強烈な音楽、というのがもしかしたら一番強度はあるのかも知れない。そんな大袈裟なことを考えてしまうくらい、良すぎるアルバムである。M.WardとかThe Mountain Goatsとかの最近の4ADの傾向を考えると、実に納得の行く1枚。泣けるな、しかし。