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この間とある著名な元雑誌主宰者のブログを読んでいて思ったのだが、私は知っているが、若いアナタは知らないだろう、大体にして近頃の若いもんは・・・、的な言い回しや、当時私はこちらに注目していたがあの頃は全く見向きもされずにどうこう、的な言い回しなどがたくさん出てきて何だかこう、気が滅入ったものである、というか逆に過去の栄光にすがっているような感じがして寂しく思えたものである。

かと思えば若い演奏家みたいな人が気取った感じのブログを書いていて、そんな中でCOHのCoseyとの共演アルバムCoh Plays Coseyをこれまた知ったかぶりな感じで評していて、〆はさすがRaster Norton、みたいな感じでまとめていたのだけれども、Coseyをあろうことか「COHの奥さん?」とか書いていてぶったまげた。「ライナー読んでないんで」とか書いていたが、Throbbing Gristleにいる彼女のことを知らずに偉そうに気取った感じで書くとは、なんか片手落ちだなあ、というかChris Carterに殴られるんじゃないだろうかウチのカミさんになんてこと言いやがる、とか言われて。

と昨日読んだ2つの対照的なブログに関して思いを馳せる今日であった。片や単に知っている、ということで偉そうな感じで周囲を卑下するような勢い。片や何だか詳しいぜオーラバリバリながらも肝心なところが抜けている勢い。両方とも凄く極端な例なのだけれども、「知っている」ということは果たして何を意味するのか。少なくともこの2つのブログを読んでいて思ったことは、そんな「知っている」ことはネット上でバンバン表明しなければならないくらいに大変なことなのだろうか。

まあ読み物として、こちらの心に波風を立たせる、という点では面白いのだけれども、何か後味がなあ、イマイチよろしくないなあ、という点が引っかかるのであった。でも確かに何事に関しても、半端に詳しいとひけらかしたくなるものだしなあ、とくに若いうちは、と思うし、年取ったら年取ったで「今の若いもんは●●を知らない」とか偉そうに言いたくなるものだしなあ。そう考えると上記2つのブログは何だか私のような中間くらいの年齢の人間にとっては両者とも反面教師的な意味合いを持っているのかも知れない。

まあ要は謙虚に、ってことなんだな、うむ。だからCircle Xの「Prehistory」を聴く。過日我が盟友の八戸在住の友人がアナログで手に入れたらしく電話でうわ言のようにCircle X、Circle Xと言っていたので、タイミングよく再発されたCDを購入してしまったのである。私はMatadorからリリースもしていたバンド、と言う程度の認識だったので、そんなにキャリアが長いバンドだったとは、と今更反省である。でJim O'RoukeとDavid Grubbsによって設立されたBlue Chopsticksからの再発、というのもまた泣ける話ではないか、と思うのであるが、音もこれまた泣ける。83年リリースのアルバムである。で、当時ニューヨークベースで活動していたということを考えれば所謂ノーウェーヴ派との絡みがすぐに思いつくのであるが、所謂ノーウェーヴ系が鋭角とすれば、こちらは鈍角、である。疑いようもなく。まず一発目のどの楽器も何もかも違うリズムで演奏しているような強烈なナンバーでぶっ飛ばされる。(繰り返すこの)ポリリズムというには全く割り切れず、かと言って兎に角フリーというほど解き放たれた感じでもない重さがグッとくる。ベースが基本的にいないバンドだったようであるが、ギター2本もかと言って中心的な役割を果たしているかと言えばそうでもなく周辺を蠢いている感じである。The Pop Groupっぽい、と感じる瞬間もあるのだけれども、何と言うかThe Pop Groupから核を抜いてしまったかのような、そんなより一層不穏な音楽である。ヴォーカルもいるし、ドラムスもあってギターもあるのだけれども、全く明らかなジャンル分けとか出来ないような、こんな音楽あったのか、と衝撃を受ける。テンションは高いのにあくまで低温で、かと言ってユルいことも決してない、明らかに不健全な1枚である。すげえ・・・。上半期最後の衝撃であった。