Santa Ana Winds

ご存知のように日頃殺伐と暮らしている私であるが、最近は何だかちょっとした潤いを与えてくれるものが我が家にあるから生きていけるんだ。

それはマカロンである。いつの間にやらブーム、なんですかよくわからないのですが。結構色々なお店で見かけるようになって、なんてステキな、と思っていたのだが、なんとここに来て違う店のマカロンが同時にひょんなことから我が家に、という事態が発生し、実に贅沢ながらもマカロンに事欠かない生活になっているのである。

それぞれの店、それぞれにマカロンの性格が違っていて、それの食べ比べ的なことも実に楽しいのだが、色とりどりのそいつらを眺めていると、何だか世の中の煩わしいことをほんの刹那でも忘れられるような気がするものである。30がらみの男が何を、と思われるかも知れないのだが、そういう風に糾弾するような無粋な輩は寧ろ抹殺したいような、そういう異常に攻撃的な気分すら湧いてくるものである。

それよりも何よりも、マカロンの魅力はその寸止め感のところにあると思う。ケーキとかだと1個食べればかなり、食べたぜ、という満足感が得られるのだが、マカロンは小さい。そして食べた後、むむ、もう少し、とか思ったりするのである。かと言ってもう1個食べるのはかなり憚られるし、といううちにまた次回のお楽しみに、という結論に達するわけである。

勿論、1個で満足できないわけではない。しかしその小ささ故にもう1個食べようか、と逡巡し、いややめてとっておこう、となるわけである。この微妙な駆け引き的なところも魅力であろうと思う。更には次回持ち越しのものもあるが故に、明日も生き抜いてマカロンをご褒美にしようではないか、と前向きな気分になれるのだから素晴らしいものではないか。

ということで今私は、主食である、とか食べまくっている、とかそういう意味ではなくマカロンで生きているのである。って大丈夫か自分。The Wedding Presentの「El Rey」を聴く。復活The Wedding Presentの3年ぶりの新作である。今作ではまたメンバーチェンジがあり、しかも録音にはSteve Albiniが参加、ということでこれは期待できるではないか。思えばCineramaのアルバムでもAlbini絡みはあったものの、The Wedding PresentでSteve Albiniと言えばシングル「Brassneck」に「3 Songs」、そしてアルバム「Seamonsters」Seamonstersと何らかの化学反応が起きたかのように強烈な作品しかないわけで、盛り上がらないでいられようか、いやいられない。そしてその盛り上がりにガツンと応えてくれるような、そういう傑作なのである。あのドラムサウンドに高速ギターカッティングまで(ひっそりとながら)復活しており、泣ける。そしてメロディもこのポップでキャッチーなメロと曖昧なぼんやりとしたメロの合間を行くような、そうそうこうだよな、というあのメロディが復活していて、どの曲も素直に興奮できる。以前に比べて大分余裕が出てきて、それが若干これまでのCinerama〜復活作に於いてはネックになっていたりしたのだが、その余裕と性急な感じが今作では見事に融合していて、勿論往年の勢いもあるが、それだけでなく新しいThe Wedding Presentのスタンダードが出来上がったような感じを受ける。でも相変わらずのDavid Gedge氏の不器用なヴォーカルはしっかりと健在で、それだけでもやっぱり信用できるバンドだなあ、としみじみとしたりするのだった。いまだに旧作をとっかえひっかえ月に一度は聴くような私のような人間にとっては、このうえない喜ばしい作品である。一生着いていきます。