We Don't Need It

そうなのだ、マイナスの感情というものは口に出して再構築したりすると、異常に盛り上がるのである。しかも言ったり書いたりすればするほどそれは増幅されて、どんどん自分を呑み込んでいくものなのである。

だから私はそういう嫌な気持ちを再構築したり、それに呑み込まれていったりしてしまうのが嫌なので滅多に愚痴を言ったりしないのである。しないようにしているのではなく、いつの間にかしなくなっていた。何か自分に対して自衛策を覚えたというか何と言うか。そんな気持ちに呑み込まれるくらいだったら、酒に呑まれたり、爆音に呑まれた方がずっと良いわなあ。そうか、だから最近酒量が増えたり、そして相変わらずレコード買ったりCD買ったりしているのか、なるほどなるほど。

と自分に対するエクスキューズの仕方も覚えたようである。あ、別に嫌なことがあったというわけではないのでどうぞご心配なさらぬよう。しかし、大人になるってこういうことなのだろうか(←多分違う)。Solomon Burkeの「Like A Fire」を聴く。御年68歳、ソウル界の大御所の新作である。前作がカントリーカヴァー集だったりして大いに盛り上がったものであるが、今作はEric Claptonとの共作曲やBen HarperKeb' Mo'、Jesse Harrisなどの提供曲を歌い、プロデュースにはSteve Jordan、ギターにはDanny Kortchmar、とか相変わらずツボを押さえた人選による作品である。何と言うか、全体的にゆったりとした空気感のアルバムで、良いねー、とか言っていると全10曲39分あっという間に終わってしまうのであった。彼のヴォーカルもソウルフルであるのはその体型からしても思いっきり間違いないのであるが、無駄な力が抜けているのはさすがの一言で、全体の良い意味でのユルさに拍車をかけている。カントリー風味は引き続き濃厚ではあるが、それだけではなく、意外にゴスペル的な匂いも強く、実はヴァラエティ豊かな作品でもある。Eric Claptonが絡んだ2曲がとても素晴らしく、アルバム全体の基調にもなっているような印象である。自分内の80年代を抜けたらこういう音楽を聴いてしっくり来るようになっていたのであった。人間って不思議である。