It's A Very Deep Sea

何だか先週末から、ずーっと所謂「80年代」の音を欲している自分に気づいた。

しかし随分と大雑把な括りである、年代で音を分ける、というのも。しかしステレオタイプにイメージされるその年代の音、というのがあるのは、90年代以降になってくるとちょっと不安であるが、少なくとも80年代辺りまではあるように思われる。そう、そういう音を欲していたのである。

我が家には所謂80年代にリリースされた音源は、恐らく他の時代を思いっきり凌駕する勢いであるのだが、そんな中でも土曜日には死ぬほどOMDBest of OMDが聴きたくて、焦りながらベスト盤をipodにぶち込んで出かけた。「OMDipodに」という行動も何だか凄いな、今ふと思えば。

そして日曜日朝起きてもまだそういう感じの音が聴きたくてCulture Clubのベスト盤This Time: The First Four Years (Twelve Worldwide Hits)を聴きながら洗濯したり、その後Level 42Level Bestとか聴いて、何だか盛り上がる、というよりはすっきりとしたのであった。

しかし不思議なものでThe Blow Monkeysとかだと何だかエッジが立ちすぎて、とかいう微妙な感じでこの丸っこい感じの音を求める先週末の私は一体なんだったんだろう。でも何か求めているときに聴くと、不思議にストン、とこちら側に入ってくるような感じで実に気持ちよいものである。

思えば私が音楽を聴き始めたのも80年代。原点回帰、というか先祖帰りみたいなものなのだろうか。大体にして音楽を聴き始めるきっかけだったCulture Clubなぞ久々に聴いてしまったわけであって。なんだろうか、死期が近いんだろうか。

で、そんな日曜日に偶々聴いてみたら昔よりも凄くすんなりと、というかそれどころか深く入り込んできたのはThe Style Councilの「Confessions Of A Pop Group」なのであった。88年リリースのラストアルバムである。この後お蔵入りになった「Modernism」モダニズム:ア・ニュー・ディケイドというハウスアルバムはあるものの、一応ラスト作である。これが出た当時は賛否両論というよりは否否否否みたいな勢いの作品で、確かになあ、と20年前、ガキだった私は思ったりしたのだ。アナログA面はピアノ主体(大体「The Piano Paintings」などという気取ったサブタイトルがついているし)の落ち着いた作品のみ、B面はいつもよりもファンク色強めの感じだけど基本今まで路線、みたいな2部構成の作品である。このA面の評判が当時死ぬほど悪かったのだが、今聴くとこれが凄く良い。というか素晴らしすぎる。D.C. Leeのヴォーカルが兎に角素晴らしいし、Paul Wellerのガサついた美声もシンプル(すぎる)バックの上で輝いている。曲も優しげな美しいメロディばかりで、アカペラのようなナンバーまであるし。やりたい放題過ぎたのかも知れないのだが、今聴くとこの涼しげな展開はしっくり来る。まあ、B面も勿論悪くはないし、激名曲「How She Threw It All Away」とか何度聴いてももっともっと聴きたい、という魅力に溢れている。まあ色々スタイルの変遷を遂げてきたこのバンドらしい最終作である。あ、先ほども触れたがこの翌年にはハウスムーヴメントにやられてしまってシングル「Promised Land」リリースして、ハウスアルバム作ってもリリース拒否され、解散、という実に最後まで彼等らしいスタンスだったのだなあ、と今しみじみ考えてみるとそう思えるのだった。そしてこのアルバムを聴いて私は確信したことがあって、KYな発言かも知れないけれども、私はPaul Wellerが好きなのではなく、The Style Councilが好きなのだ、ということである。何か胸のつかえが下りた気分である。そういうことだったんだなあ・・・。でも今の時代そういうこと言うと本気で怒られそうなので、あくまで胸の中にしまっておきたい、ってここで表明しているけれども。