Trixie Blues

こないだのNag3で触れた、「コントロール」という映画であるが、1つ大事なことを書きもらしていたのであった!

恐らく今日で我が街での上映は終わりであろうから、ネタバレも覚悟で書こうと思うのだが、劇中、イアン・カーティスの愛人の存在の証明を探そうとデボラ夫人がイアンの部屋を探しまくった挙句に、彼女の名前と電話番号が書き付けてあるのを発見するのだが。

その書き付けられているのがなんとSiouxsie And The Banshees「Join Hands」Join Handsのなのである。これは原作となった本では(つまり史実では)単にノートの白いページに書いてあっただけ、ということなので映画ならではの演出なのである。そうそう、ダブルジャケットなんだよなあ(ゲートフォールド、と言うのか)。そんでその内側にはメンバーの写真というかデッサン風のポートレイトがあるんだよなあ。で、そこに電話番号と名前が書いてあったのである。イアン本人は聴いていたのかどうなのかはまったく分からないけれども、少なくともアントン・コービンの演出の巧みさに唸らせられた瞬間であった。

とか言ってもネタバレどころか、全く意味がないポイントなのかも知れないけれども。しかし何だかグッと来るポイントであった。そう、多分皆、あのシーンには雷に撃たれたような衝撃を受けたに違いない、と信じて疑わない私である!

どうやら一週間の疲れのせいで、自己中心的になっているようである。「Oh, Run Into Me, But Don't Hurt Me!」なるSub Rosaからリリースされたコンピを聴く。サブタイトルが言っているように、1923年から1930年までの間の女性ブルーズシンガー達による全24曲、78回転盤のコンピレーションである。そうか、昨年Canned Heatのドラマーが集めた78回転盤のコンピが出た(我が家にLPであるのだが、ちょっと探すのが面倒くさいので確認していないのだが)わけで、そういうノリでシリーズ化していこうということなのだな、とここに来て理解できた。勿論日頃からこういうレコードをコレクションしたり、若しくはこういいった種類の音楽を聴いているわけではない。しかし、ひょんなことから手にとって猛烈に興味を掻きたてられたのでこうして聴いているのだが、とても良い。1人も知らないアーティストばかりなのだが、それでもこのアナログの雑音まみれの素朴な音楽に、哀愁漂いながらもどこか豪快な歌と演奏は何だか異世界に紛れ込んだような気分にさせられて、とても新鮮である。ここに収められた女性達の素性に関しては、何人かは知られてはいるようであるが、ほとんど情報がない人が多数を占めていたりして、彼女達は何故ここに収められている音楽を吹き込んだのか、そしてその後どこへ行ったのか、とか考えると何だか凄く深い歴史的な考察が必要になってきそうな感じでそこまで語る権利は私には全くないわけであるが、そういう難しいことは抜きにしてここに収められたナンバーは、素朴な管楽器やピアノやギターなどのバッキングの音色も相俟って、不思議と聴きやすいし、明らかに今とは違う時間の流れの中に存在している感じで魅力的なのだった。