Mary

毎朝通勤で通る道で必ず一緒になる車がある。

それは白いメルセデスベンツのクーペで、2ドアなのに大きくて、なかなか生活臭のしない車である。

まあ、毎朝見るから「そういえばどんな人が運転してるんだろう」と変に野次馬根性というか何と言うか、そういう感じで信号待ちで並んだときにふと見てみたら。

運転席では、制服を着たOLさん風女子がパンを齧っていた。

何かこう、世の中理解しがたいことというのは確かに存在するのだな、と実感させられつつSpectrum Meets Captain Memphisの「Indian Giver」を聴く。来日までした(うううう行けなかった・・・)Sonic Boomさんの新作であるが、なんとメンフィスのJim Dickinsonとの共演アルバムである。あれ、「Time Out Of Mind」Time Out of Mindにも参加してたよなあ、Jimさんそういえば。さて、この組み合わせは何だかはてはて、と思うと同時に、彼の選曲したコンピ「Spacelines」Spacelines [Sonic Sounds for Subterraneans - the Roots of Spacemen 3/Compiled By Sonic Boom]のことを思い出したりすれば、なんとなくわからなくもない、そういう組み合わせである。Spacemen 3にも実は泥臭い、というかブルージーと言っても過言ではない側面が存在していたわけで、その方向性はSpiritualizedさんの方に顕著ではあるのだけれども、勿論こちらにもあるわけで、なるほどな、とか思うのであった。相変わらずの極端に少ないコードで、しかしいつも思うのだが結構明るめで開放感のあるコードで、そしてアナログシンセが鳴り響き、うっすいドラムマシーンとも生ドラムとも何とも区別しがたい単調なドラムがリードし、という感じで初期(90年代初頭の)Spectrumや後期Spacemen 3を想起させる世界と、アップライトベースも交えた生楽器主体の渋いブルージーな世界が共存していて、悪いファンである私としては思いっきり盛り上がった。しかもヴォーカル入りなのである。何か久々に(おそらくSunrayとやったThe Velvet Undergroundの「Ocean」以来か)彼の歌声を聴けた気がする。ちなみにJim Dickinsonもヴォーカルをとっており、今回の名義の意味を容易に見出すことができる。全体的にはSonic Boomが歌うといつものSpectrum節で、Jimがヴォーカルをとるとシンセは響いているものの途端に渋い、ソウル風な色彩を帯びてくるわけで、実は以外にヴァラエティ豊かに楽しめるアルバムである。しかしSpacemen 3時代にもやっていたMudhoneyの「When Tomorrow Hits」のファズギター全開のカヴァー再録とか聴くと、泣けるなあ・・・。ある時期からのExperimental Audio Researchにはちょっとついていけなくなってしまった私ではあるが、こういう音をまたやっていただけると非常に嬉しいもので、Captain Memphisさん a.k.a. Jim Dickinsonのお陰かどうかはわからないが、是非今後ともこういう作品も出していって欲しい、と切に願うのであった。