Blue Boy

実は水曜日からちょっとした休みだったのである。その休みは明日まで、のわずか6日間だけではあるが、社会人にとって旗日でもないのにお盆でもないのに年末正月でもないのにこれだけまとまった休みが取れる、というのはある意味信じられない、というかこの上ない幸せ、と考えてもおかしくはないものであろう。

まあ、私の信条は「今ある幸せに満足してはいけない」だから「たかが6日間で何を喜んでいるのだ自分」と喝を入れたいところなのだけれども、客観的に、他と照らし合わせて考えた時にはかなり恵まれた状態であることは疑いようもないことである。であるからして、何とか有意義に使おうと試みてみた。

ということで休みに入る前から色々な人と会う約束を取り付けてはちょこちょこと会っては旧交を温めたり、最近はメールや電話でのやり取りのみだった人と食事したりすることもできて実に有意義ではあった。有意義だったし、とても楽しかった。しかしそれでもあまりにもスケジュールをビシッと入れすぎてしまったがために、夜、床に就く時には、ちょっと休みっぽくなかったな、とか思ってしまう自分がいたのである。

何なのだろうか。自ら予定を入れておいて、そしてその会合やら何やらをとても楽しみながらも休みっぽくない、というこの思いは。それは多分、自分1人で1日の時間を気ままに使う、ということが出来なかったためだと思う。ということで今日は何ら約束がないまま、ブックオフで雑誌を売り、大きな本屋に行き、奮発して寿司を食べ、コーヒーを飲み、中古レコード屋に行きThe March VioletsやらThe Fallのライヴ盤やらJeffrey Lee Pierceやらのレコードを安価で購入する、ということをしてみたのである。

端から見れば、どんだけすることがない人なのだ、とか折角のお休みなのに何故The March Violetsなんて買っているのか、という疑問が沸き起こって当然だと思う。自分でも若干そういう思いはある。また、寿司とか1人で食べて楽しいのか、とかいう思いもあるのかも知れないが、これが美味かったりしたのである。

何だか私は人に会ったり話したり遊んだりしたりするのもとても好きなのだが、それと同じくらい、もしくはそれ以上に1人でぼんやりとした計画を立て、行動することが好きな人間のようである。1人でいるからこそ、何だか色々考えが浮かんでは消え浮かんでは消え、時に沈み時に上がり、時に泣きたくなり時に笑い出したくなり時に怒りたくなり、と心のマッサージができるのである。そして今日という日を終えようとしているこの時間、今日は何だか大したこともしていないのに充実してて、休みっぽかったなあ、と思っている自分がいるのであった。

要はバランスの問題なのだと思うのだけれども、仕事をしていても昼飯くらい1人で食べたいものだ、と日頃から思ったりしてしまう私だからこそ、1人で過ごす日、というのはとても貴重な意味を持っているのだった。明日の休みも多分、家でレコード聴いてコーヒーを淹れて散歩して、とか過ごすのであろうが、それはその後に控えている「人と会いまくりの日々」に備えるためにも必要なのである、と思う。

しかしこれがエスカレートすると本当に引きこもりになってしまいそうだから、何事もバランス、なのであろう。ということで今日はVincent Vincent And The Villainsの「Gospel Bombs」を聴いていた。インディ時代のシングル、そしてメジャーに移籍してからのシングルが話題になっていたバンドのデビュー盤である。最近は「話題の新人」が多すぎて、本当に多すぎて(もしかしたらインターネットのせいかも知れないのだけれども)、逆に店頭でとか人づてで、とかじゃないとなかなか手が出なかったりする私であるが、この作品も恐る恐る聴いてみたら、何だかスカッとする音楽で燃えてしまった。ロカビリー的なシャッフル感と瑞々しい感じが実にここ新鮮である。もしかしたらテムズビート、とかいう呼称で括られてしまうのかも知れないのだけれども、もしかしたら他のテムズ勢には感じられない、よりルーツに根ざした感じ、空気読まずにガンガンにストレートにやってしまう感じとか、何だかちょっと一線を画しているように思えるのだった。曲は人懐っこいし、ドゥーワップ風なコーラスがあったりとても盛り上がれるのだけれども、良いバランスでこちらとの距離を保っているように感じられて(やはりバランスなのか)、何だか暑苦しくないし、かと言って突き放されているわけでもない、そういう絶妙な温度の音楽である。しかしヴォーカルは音割れる寸前なくらいに熱唱なさっていて、そこら辺のあっつさは気合いが感じられて凄く良い。そう、そういう気合いとギターの弦の震えるところとかが感じられるくらいの生々しさと豪快さが良いんだなあ、うん。昨日のThese New Puritansとは真逆の音だろうけれども、どちらもまだまだ新しくて面白い連中は出てくるんだなあ、と思わせてくれるのであった。