Colours

ところで「ばっけみそ」なる食べ物を貴兄貴女はご存知だろうか。

これはふきのとうと味噌とを砂糖やらみりんやら酒やらで味付けしたもので、ご飯のお供としてよく食されるものである。まあ、トッピングのようなものである。

数年前に知人から自家製の奴をいただいて、その絶妙な苦味と甘味、味噌の味とのバランスに感動していたのだが、最近遂に自家製ばっけみそが完成してしまい、これがマジで半端ない。半端なく美味い。このふきのとうの苦味と甘味のバランスが、実にビンビンに響き、日頃ご飯をお代わりすることなど365日中、カレーの時の10日くらい、な私が連続してばっけみそのせいでお代わりしまくっている。それくらいヤバイ食べ物である。

しかもこの季節だからこそのふきのとうなわけで、その刹那な感じもまたこの美味さを周りから盛り上げているような気がしてならない。うん、これは今年の春を代表するものだね、ばっけみそ。

しかしふと考えてみると、果たして10年くらい前の自分はこんなに熱狂してばっけみそ食べたりしただろうか。勿論当時は食べたことなかったし、存在することすら知らなかった。そういえば、こないだ鍋を食べたが、メインの豚肉よりも上に散らしたセリが美味すぎて、セリやべえセリやべえ、とうわ言のように呟きながら食べたものであるが、セリだって昔から食べていたものの、こんなに熱に浮かされたように美味さを感じることなど決してなかったはずである。思えば干物だってそうである。最近夕食に干物が出てくればもう顔がほころび、どんなに骨が多い種類の魚であれ、丁寧に骨を外し、にこにこ食べているが、これとて10年、否、6,7年前の私だったらここまで興奮していたかどうか、大いに怪しいところである。

大人になる、ということには良い面も勿論悪い面もあって、どっちかと言えば世の中の下らない、愚劣な面が多く見えてくる、と言う点に於いては絶対に悪なのだが、このように新しい味覚を発見できると、なかなか悪くないじゃん、と思えてくるから何だか自分という人間も単純だな、と思うのだった。この単純さだって、大人になってやっと認められるようになってきた単純さ、一回りした挙句の単純さだと思うから、何だか大人になるって意外に良いことなのかも知れない。

とか33歳にして何を青臭いことを、とか思うのだが、まあ、要はばっけみそマスト、ということでThese New Puritansの「Beat Pyramid」を聴く。何だか変に盛り上がっているUKの新人4人組のデビュー盤である。嗚呼、Dominoからのリリースなのか。Dominoも大変なことになってきているなあ、とか10年前にはDominoをレーベル買いしていた私は思うのであった。さて、この方々であるが、何でもバンド名はThe Fallの曲名から取った、とかカフカデヴィッド・リンチの影響が、とかディオールのランウェイに登場したとか、神秘主義者である、とかメンバーの兄弟は大層仲が悪い、とか何だかやりすぎなくらいネタに溢れているのである。で、肝心の音楽性であるが、打ち込みも交えたぶっといビートの組み方は明らかにダブステップ以降というかTimbalandみたいな感じなのにも関わらず、全体を「暗い」とは言わないけれども何だか不穏な空気が覆っていて、その熱量の内への篭り具合とか、単純なんだけど鋭いギターは何だかJoy Division的というか、で吐き捨てるようなヴォーカルのスタイルとかはなるほどThe Fall的というか、もう色んな要素がぐちゃっと詰め込まれまくっていて、この混沌とした感じはどこか今風な気がする。物分りの悪くなったKlaxons的な感じではある。そう、音には勢いあるし、多彩なのだけれどもどこかベクトルが内に篭っているところが多分このバンドの最大の特徴なのだろうし、同時に好き嫌いが最も別れるところではないか、と思うのであった。でもまだまだ若い(何でも20歳前後だそうな)ので、今後どういう風に転んでいくのか分からないし、これくらい混沌としていてこそのデビュー作だと思うのだった。その方が今後の展開が楽しみになってくる、というものである。しかし色々な雑誌とかネットとかでこの連中について書かれているのを読んだが、いやそれは持ち上げすぎなんじゃね、とかいう記事ばっかりで、ちょっと引いたりしたのであった。