Candida

昨夜は珍しく地上波のテレビをふとつけたら、なんと市川 崑追悼、ということで2006年版の「犬神家の一族」を見ることができたのだった。

ってさっきmixiを見ていたら昨日のmixi日記キーワードは「犬神」だったらしい。皆テレビのことで日記書いてるんだなあ。その前の日は「レッドカーペット」だったしな。

まあ、それは良い。実は私は「犬神家の一族」というか金田一耕助シリーズが大好きなのであった。なんかこう、日頃怖いものとか、ドキドキハラハラする映画ドラマは苦手なくせに、それなのに何故かこの血みどろのおどろおどろしいシリーズが好きなのは自分でも不思議である。

しかし、昨日のテレビ版犬神家を見ていて思った。あ、全然怖くはないのだ、と。寧ろなんだか生首とか死体とか血とか、もうリアルに見せることをハナから諦めたかのような作り物具合であるし、それよりも映像の美しさや場面転換の鮮やかさなどが実に心に残るのであった。とりわけ私の大好きな展開であるところの、佐清が偽者であることを白状して、「俺が犬神家を乗っ取ってやるのだわははは」みたいな勇ましいシーンのすぐ後に例の湖から足だけ出てるシーンへの移り変わりは、思わず「キター!」であった。なんだろな、疲れてるのかな、この喜びよう、とか思ったのだが何とも言えず興奮するのであった。いやー燃えたなあ。

そういえば『レコスケくんレコスケくん COMPLETE EDITIONでも金田一ネタがあったが、もしかしたらレコ好きは金田一好きなのか。まあ、そんなことは関係なく昨日はビール1リットルくらい飲んだし犬神家も見たしで、週の初めから充実しているのう、と床に就いたら佐清の夢見て焦った。まあ、こんなこともあるわな。

Ultra Vivid Sceneの「Rev」を聴く。80年代後期4ADアメリカ勢御三家の1つとしても御馴染みのUVSの92年発表のサードである。ちなみに他の2つはThrowing MusesPixiesなのだが。しかしこのUVSは何だかパッとしないままに消えてしまった、という世間一般での認識のようであるが、私の10代はUVS抜きでは到底考えられないのであった。Kurt Ralskeの1人宅録ユニットのそのままの音で1人ジザメリとか言われたファーストUltra Vivid Scene、バンド編成になってよりどっしりとポップになったセカンドJoy: 1967-1990、そして最早何だかよくわからないくらいに突き抜けたこのサード、とどれもが名作である。このサードではセカンドのコンパクトにまとまったポップさをかなぐり捨てたような、地に足がついていてしかるべき音なのに、全くどこにも属さない音楽になっている気持ち悪い1枚である、良い意味で。Fred MaherプロデュースでMatthew Sweetも参加した曲もあるが、キャッチ−なリフでポップなメロディにも関わらず、何だかどこにも落ち着かない音なのである。その他の曲も結構スライドギターが入ってきたりして、生音メインでどれもどっしりしているはずなのに、何か浮ついた地点で鳴らされているような印象がある。多分にKurtさんの気だるい淡々としたヴォーカルのせいなのかも知れないが、どこか妖しい。でもどう聴いてもメロディはポップで凄く不思議な作品に仕上がっている。しかし地味だったのかも知れない。もっと時代の音っぽくシューゲイザーばりのギターが(ギターはノイジーだったりするがあまり全体を覆う感じではないんだなあ)入ったり、ダンスビートとかやればもっと徒花的に盛り上がったのかも知れないし、もしくは他のアメリカ勢2バンドのようにがっつーんと捩れながらもまっすぐにロックンロールをやったらもっと伝説的になれたかも知れないが、そこら辺には行かなかった分割りを食ったのかも知れない。現にこの後は作品のリリースは全くなく、Kurt Ralskeは他のバンドのプロデュースをやったり(Ivyとか)、今ではヴィデオ映像作家として成功しているようであるから余計に忘れられているのかも知れない。しかしその振り切れなさ具合こそがこのUVSの最大の魅力であり、こんな良い意味で割り切れない音楽、少なくとも私は後にも先にも聴いたことがない。だからこそ今聴いても滅茶苦茶新鮮なのであった。しかしamazonで検索したらこんなに安くて良いのか、ってくらい安いな・・・。私の青春も今の世の中ではその程度のものなのかも知れない。しかしだからと言ってこの作品の価値がないということを表しているのでは決してないのだ。