Lost In Music

最近、ネットで、約20年くらい前に起きた連続幼女殺人事件のことについて書かれていたページを読んでいた。

この事件では犯人の部屋から物凄い数のビデオテープとか漫画本とかが出てきたことが結構話題になったように記憶していたし、確かこの辺りから「オタク」とかそういう言葉が現れてきたようにも記憶している。私も当時中学生だったが、この犯人の部屋の映像はテレビで見たことがあって確かに夥しい量のビデオと本があったことはよく覚えている。

いや、問題はそれではない。その量などには関してはまあ、好きだったらそうなるかもな、と私は思うのだが、そのページに於いて同じようなマニア(そのページでの表記)がこの犯人の異常性について言及している部分があった。それは「好みが拡散していること」と「分類能力の欠如」だそうである。

へえ、そういう考え方もあるんだねえ、とか思いつつ読んでいたのだが、はたと気づいた。これビデオとか本じゃなくて、CDとかレコードとかだったら、鈴木亜美の横にFoetus、とかいうレコード棚、そしてこの部屋の散らかり具合、まさに上でマニア氏が仰っている異常性がばっちりと当てはまってしまうではないか・・・。

幸いなことに私はまだそんな大変なことは犯していないのだが、もし万が一何か起こったら「異常」というレッテルを貼られ、たとえ冤罪でもしょっぴかれた挙句有罪の判決が下り、処刑されてしまうのではないか、カフカの『審判』に於けるヨーゼフKのように、という冷たい汗を伴う怖い考えが頭に浮かんできてしまったので、今後も大人しく暮らして世間の耳目に対してこの部屋を公開される日が来ないことを祈るばかりである。

しかし最近もよくあるのだが、その人が読んだり見たりしたものがその人の起こした事件(大体が殺人事件であるが)と関係している、だからそれらがよろしくない、とか断定するような風潮はちょっとおかしい、というか短絡的に過ぎる、と思うのだな。マイケル・ムーアじゃないけれどもそう思うのであった。

The Fallの「The Infotainment Scan」を聴く。93年のアルバムにボーナストラックを大量に追加した再発盤である。この時期はメジャーを離れ、またインディに戻り、しかしそれでも流通はメジャー、という結構イケイケのポジションだった頃であり、また唯一の全英トップ10入りしたアルバムでもある。まずメジャー期のリズムの実験みたいなものがしっかりと実を結んでいて打ち込みも導入しながらも結構強烈なグルーヴを持った曲が多い。そして非常に歯切れの良いギターが全編で大フィーチャーされているのもこのアルバムのイケイケ感を煽っている。何だかいつもよりもイントロ一発で持っていかれるような、そういう勢いのある楽曲が目白押しだし、何だかポップな気もする。とは言え、やっぱりMark E. Smith御大の吐き捨てるようなヴォーカルというか喋りというか、それはきっちりと健在で、イケイケ感に煽られたのかいつもよりも言葉数が多いような気もするし、吐き捨てる勢いもありまくりな気がするのであった。ディスク2にがっつりと収められたスタジオライヴの音源も異常なまでのスピード感とイケイケ感が非常に印象的で、実はこの時期が(度重なるメンバーチェンジは続行中だったものの)一番バンドとして充実していた時期だったのかも知れないなあ、とか思うのだが実はThe Fallって充実しているしていない関係なく毎度毎度格好良いのでそれは気のせいなのかも知れない。でも、意外にポップでしかもキャッチーなリフ連発のロックンロールバンド(ちょっと横ノリのグルーヴあり)という姿を上手く音源化したアルバムなのではないか、と思う。というかThe Fall聴くと高ぶってしょうがないこの頃なのであまり当てにならない表現連発なことはお断りしておきたいところである。