Singing

先日ここNag3でも話題にした薄皮たい焼き、であるがやっとこさ食べる機会にありつけたのであった。

我が家の近所にも1つそのような店があるので、今日遂にそこの店の暖簾をくぐったのである。ちなみにそこの店に暖簾があったわけではないのだが、まあそういう表現をしてみたかったのである。

中では結構な人数が無言でたい焼きが出来上がるのを待っていて、私も注文したのだが「20分くらいかかります」とか言われて一瞬たじろいだ。しかし、私にしてみれば2ヶ月くらい前から気にしていて、そして昨日「明日は絶対たい焼き食べる」と誓ったわけだからここで引き下がるわけにも行くまい。ということで店内で福山雅治のラジオ番組を聞きながら待っていたのである。

なるほど店員は若い女子2人で1人は主に焼き、1人は主にレジ番とかをしているのだが、目に入るのは既に焼きあがっているたい焼きの量が結構あることである。初めは大量に注文した人がいるのだろう、とか電話で取り置きでも頼んでいるのだろうか、とか思っていたが、一向にそこから取り崩していく素振りは見えず、ストックたい焼きはたまっていくばかりなのであった。

その後約25分くらいしてから私の注文したものが手渡されたのだが、その前の客の注文品も別にそのストック状態のたい焼きから出されることはなく、まあ、焼きたてを、というポリシーのようだからそのまま焼きたてのものが手渡されていったのであった。

それはそれで良い。となるとあの大量に焼いていた、そして店内の客に渡されることのなかったあのストック状態のたい焼き、あれはなんだったのだろうか。こちとらまだかまだか、とじりじりしている状態で大量に誰にも手渡されることのないたい焼きを見つめていたので、と同時にこんなに客が大勢じりじりと待っている中で何だか手持ち無沙汰な感じでいるレジ番担当の女子を見るにつけ、何だか発狂しそうなぐらいにじらされたものである。勿論その後帰宅してぱくついたたい焼きはあんこがぎっしりと入っていて、しかも甘すぎることなく、そしてふんわりとしていて実に美味しかったものだが何だか謎が残ったままなので、これはまた行って確かめて見なければなあ、と思う次第である。

というかですね、単にまたたい焼き食べたい、というだけである。Yoshi Wadaの「Lament For The Rise And Fall Of The Elephantine Crocodile」を聴く。La Monte YoungやらPandit Pran Nath等とも交流があったフルクサス一派の日本人の彼が1982年に発表したアルバムの再発である。聴いてみたいものだのう、と思ってはいたのだが当然ながらレア盤だったのだが遂にCD再発されて、しかもレコードとは違ってエディットなしのフルヴァージョンで、という実にめでたい1枚である。ちなみに昨年最後のお買い物だったのだが、結構な頻度でそれから聴いている。地下にある水のないプールで録音された2曲が収録されているのだが、1曲目は声のみ、2曲目はバグパイプを組み込んだ改造楽器プラス声、という、こう聴く前からなんじゃそりゃ、となりそうなものであるが、これが意外に変なものではない。1曲目の声はPandit Pran Nath仕込みの唱法でプールの残響とともに何か不思議な倍音が現れてきていてそして時に澄んで時にくぐもって、時に近づき時に遠ざかり、30分以上の作品なのだが全く飽きることはない。ちなみに聴きながら部屋の中で移動したりすると聴こえ方が違ったりして何だか軸がグニャリとしてしまうような、そういう感じである。そして2曲目はずーっと一定のピッチで鳴り続けるバグパイプ様の楽器の音色が強烈で、何か音がギラギラしている。変化がなさそうで実は微妙にピッチが異なった音が重なったり、1曲目で御馴染みの声がバグパイプの音色に共鳴するかの如くに入ってきたりして、これまたスリリングである。なんかこういうのをスタジオでだらーっとやったのではなく、そんな地下のプールまでわざわざ出向いて楽器や機材をセッティングして、というところからもまずビンビンに男気を感じるものであるが、出来上がった作品の何か知ってはいけないものを知ってしまった感じの怪しい音色はまさにド迫力と言えるであろう。トリップだの麻薬的だの、そういう形容もできるのだろうがまずは全体から立ち上がってくるギラギラした妖気のようなものにやられる1枚である。