The Sinking Of The Titanic

この間の冬がとても暖かかっただけに、今の冬が大層堪えるのである。

何か身体が去年の冬の感覚のままに冬というものに対峙してしまいがちで、思わずくしゃみ3連発、とかそういうことをやってしまったりする。気をつけて暖かい服装をするようにしているのだが、それでも何だか身体自体が順応できていないような、そういう日々である。

思えば去年の夏も壮絶な暑さだったわけで、身体がまだ夏の感覚が残っているような、そういう感じだから大層寒く感じられるのであろうか。何だか昔は暑いのは全然ダメで、寒いのは寧ろオッケー、だった筈の私なのに何だか寒さが、例えば寝る前とか強烈に感じられてどんなに布団の中で身体の向きを変えたり布団のかけ方を変えたとしても、寒くてなかなかに難儀するのであった。

これって歳取ったせいなのだろうか。いやいや、身体が順応していないだけ、若しくは今回の冬の寒さがいつもより強烈なだけだ、と自分を納得させたいお年頃である。

Gavin Bryarsの「The Sinking Of The Titanic」を聴く。1969年に作曲されて、リリースされるのは今回で4回目であろうか。これはタイタニック号が沈没する際に、船内の楽団が聖歌を演奏していた、という生存者の証言を基に作られた曲である。沈んでいく中での音の聴こえ方とか、そういう科学的(?)な考証も加えつつ作曲されている曲で、実に優しく美しいメロディといつ終わるとも知れない(生存者の発言では、船が沈んでも音が聴こえていたらしい)展開が印象的な曲である。まず曲のコンセプトがとても面白いのだが、この聖歌を下敷きにしたメロディのお陰で実に感動的な作品になっているように思うのだが。ちなみに4回リリースされているのだが、タイタニック号に関して新しい発見がある度に曲が変わっていく(主に長さ)のである。今作はPhilip Jerkのターンテーブルを加え、そしてAlter Ego(ちなみにあの「Rocker」をやっていた連中とは全く関係ない楽団)が参加して2005年にヴェニスで行われた演奏のようであるが、遂に長さは70分を超えてしまっている。今回は船が沈没した後に、タイタニック号からの無線が傍受された、という話が大きなバックボーンになっているようである。そして沈んでしまっても音が水を触媒にして延々と聴こえていた、という証言とあわせてこの、全く終わらないような印象を受けるヴァージョンが作成されたのであろう。また、Philip Jerkのターンテーブルから出されるアナログ盤のノイズが延々と入っていて、まるで水面を表現しているかのような印象を受ける。今回はこんな長尺ヴァージョンなので、聖歌のメロディとその断片が静かに入ってくるまでに延々と静けさを強調するような作りになっていて、だからこそ美しいメロディが余計に際立つ形になっている。この長さだからさあ気合い入れて聴くぞ、と向っていくのだが、何だか一気に引き込まれて最後は夢見心地になってしまうのであった。