Don't Leave Me Mama

そういえばこの街を出て暮らす、ってことは考えたこともなかったな、とふと思ったりした。転勤族の家でもなかったので生まれてこの方ずーっと同じ街にいて、そしてしかもついこの間まで生まれてから30年近く同じ場所で暮らしていたし。だからふと、「この街での暮らし」というものを客観的に眺めたくもなったりしたのであった。違う街に住んで、この街での暮らしのことを考える、ということをしてみたくなったのであった。

しかしいずれにせよ、何だかんだでこれからもこの街を出て暮らすことはまずないであろう。多分このまま死ぬまでこの街で暮らしていくのだろうな、と思ったりした。この街は何だかとても中途半端な大きさなので、皆が通り過ぎていく。だからこそ、この街に留まって何か色々やって生きていくことの方がなかなかないことなのかも知れないな、と思ったりした。逆にこの街に留まる、ということをアイデンティティにしていくくらいが面白いかもな、とか思ったりした。

とまあ、何でそんなことを考えたかと言うと、この街で何か活動をする人は何故か必ず「仙台を拠点に・・・」とか「仙台で全てをこなし・・・」と言うことをとても大々的に言っているわけで、それは単に活動場所の紹介以上の何かが付与されているような、そういう勢いなのである。で、そういうのを見るにつけ、そんなにそういうことをするには難しかったりする場所なのかな、よっぽど珍しいことなのかな、とか思ったからであった。

何もそんなに肩肘張らなくても、とか思ったりするわけであった。自分だったらどうだろうか。別にこの街にこだわりなく、必要だったらどこか他の場所ででもやるかもな、と思ったりするわけであった。

まあ、別に今も、そしてこれからも何かあるわけではないから逆に「活動=仙台にいること」という感じで行くのだけれども。

「Home Schooled: The ABCs Of Kid Soul」を聴く。あの変態発掘レーベルNumeroが発掘した、「Jackson Fiveになれなかった」キッズソウルの音源をコンパイルしたアルバムである。前は「Joni Mitchellになれなかった」女性シンガー、みたいな感じのコンピWayfaring Strangers: Ladies from the Canyonを出していたし、よくもまあ見つけてくるものだ、とか感心するが、詳しい人だったらもう御馴染みの面子なのだろうか。というわけで1968年から75年までの間の、そういうグループの音源ばかりである。勿論私は1つも名前を知らない。しかしこれが面白いのである。もっと良いのあるよ、とか多分詳しい人だったら言うのだろうけれども、私は偶々このコンピに出会ったから聴いているわけで、それを面白がれるのだから良いのである。何かドープなファンクものから、結構切ないソウルバラードまで子どもの歌、時に演奏も含めて全17曲である。若干音程が甘かったり、何だか楽器のチューニングが怪しかったりとか言う音源もあるのだが、中にはめっちゃくちゃ痺れるファンキーなものまであって度肝を抜かれる。そして何よりも、実に瑞々しいのである。どれも元気一杯だったり、ちょと背伸びした感じだったり、もしかしたらこれ子どもというより赤ちゃんが歌ってるんじゃないのか、ってくらいの幼い声だったり、歌詞も「子どもの主張」みたいな感じの曲があったり、意外に飽きずに聴けるのである。何だか声変わり前の、そしてもしかしたら演者自身の興味が移ってしまう前の、ほんの短い期間を鮮やかに上手い具合に切り取ったような、そういう鮮度の高い(って30年以上前の音源に対して言うことでもないのだけれども)音源集なのである。何か時期的にもディスコブーム直前とか、そういうタイミングの悪さもあってブレイクはできなかった、みたいな感じのことがライナーに書いてあったりするのだけれども、そういう哀しい印象よりは、聴いていて楽しい、という印象の方が強いので、コンピとして凄く成功しているように思う。私がこれは、と思った曲は何曲もあるのだが、Step By Stepなるグループが、何だかフロントの子が13歳とは思えぬような落ち着いた歌唱(まあ、声は可愛いが)と結構催眠的な感じの演奏でとても気に入ったりした。何気にどうやらツインドラムっぽいんだよなあ・・・。