Nebenraum

我が家は結構最寄りの駅から距離がある。

だから電車に乗るときには徒歩だと結構辛い。雨の日風の日はとみに辛い。猛暑の日も辛い。これから出かけるのに、電車に乗る前に既に汗だく、みたいな状態になるので全てのやる気が殺がれる感じである。もしも私が独身で、今の場所に住んでいて、これから街中でデート、とかいう時に猛暑だったりしたら、多分キャンセルするか、君がこっちに来いよ、的な感じになってしまって多分その恋愛は幸せな形で成就することはまずないであろう、と断言できる。

自転車に乗っていた頃が懐かしい。否、正確に言えば自転車はあるのだが、我が家の駐輪場で朽ち果てているのであった。別にほったらかしにしておいたのではない。我が家の前はもんの凄いハリケーンのような突風が吹きまくる川沿いなので、自転車が面白いように風に弄ばれて倒れまくった結果、凹むは擦れるわ壊れるわ、という散々な感じになってしまったのである。かといって修理しようにも、どこから手を着けたら良いかわからない、という感じなので途方に暮れているのであった。

ということで今年中の我が家の目標としては、折りたたみ自転車を導入する、ということがある。折りたたんで物置とかに入れておけば邪悪な風の野郎に好き勝手にされることもないであろうし、という非常に実際的な発想でもって欲しているのであるが、なんだ、この間ちょっとホームセンターで色々見てみたら、お洒落アイテム、みたいな爆弾発言的文字がそのコーナーには躍り、しかももんの凄い種類の折りたたみ自転車があってたまげたのであった。そうか、時代が私に追いついたか、とか妄想したが考えてみれば実際にまだ所有していないわけであるから、これでは私がフォローしているような形になってしまうではないか。

しかしたまに夢想する。これから冬を経て暖かい季節を迎え、そんな中河原を自転車で駆け抜けることを。嗚呼なんという爽やかな(イメージ)!健全な身体に健全な魂が宿る!酒量も減ったりして!何事にもやる気が出たりして!もうKTLとかMBとか聴かなくなったりして!

というか自転車でそこまで色々激変するなら、世の中ちょろいものなのだが。ということで自転車に乗らず、しかも急に寒くなって震えながらFenneszの「Hotel Paral.Lel」を聴く。デビュー盤の再発プラスボーナストラック、の新装版である。これ以降はかなり、ある意味ポップで、叙情的な側面を打ち出したり、David Sylvianのヴォーカルをフィーチャーしたり、となかなかの歩みを続ける彼の原点ともいえる作品なのである、って偉そうに言っているが初めて聴いた。そう、だからこそこのアルバムに於けるストイックなまでの(所謂)ノイズ音のレイヤー、とか結構唐突に入ってくる強靭なビートとか、プラグの接触音のアンサンブルみたいな、そういう極端なまでにある意味耳障り(低音がでか過ぎて腹にも悪そうな曲とかもあり)な、昔(今も言うのか)グリッチとかと称されていたような音の連続ではあるが、ふとそのレイヤーが若干減った時とか、音が入ってくる瞬間抜ける瞬間などに、不思議と叙情性を感じることができるのが最大の特徴なのであろうか。不思議である。音が1つ減っただけでなんか泣けるような感じになってしまうとは。そのさりげないからこそこちらにグッと来る感覚は、それ以降の感覚とはやはりちょっと異質な感じがするのだが、やはりこの積み重ねの妙のような魅力は彼の最大の魅力なのだなあ、と改めて認識させられるのであった。