Mama Told Me Not To Come

我が家のレコード棚の前には、実は何だか余ってしまった棚が置いてある。

「何だか余ってしまった」というのは一体どういうことだ、と思われるかも知れないが、同居人が引っ越してきた際、使わなくなった棚を何か勿体無いから、という理由でドンと置いてしまったのだ。

当然ながらレコ棚の前なので、「嗚呼あれが聴きたい」とかDJをする際に「あれ、あの12インチは・・・?」とか言って探したり、とかいう時には非常に邪魔になる。だからそういう場合にはよいしょ、と力を入れて棚を90度くらい回転させなければならないからとても難儀である。

別に余ってるんだったら捨てれば良いのに、と思うでしょう。私もそう思う。しかし実はその棚には既に色々なものが置かれていて、最早この棚がないとこの部屋は瓦解する、くらい重要な役割を担ってしまっているのであった。

えー主に本ですね、本がどかどかと結構無造作に置いてあります、この棚には。しかも写真集とかポスター原画集とか重いハードカヴァーものとかそういうものが結構縦になり横になり、上になり下になり置いてある。そして色々な方々からいただいたCDRとかもまとめて置いてあるし、マキシシングルの類も無造作に、それこそMihimaru GTのシングルやらChee'sのシングルやらYUIのシングルやらがどちゃっと置いてある。そしてこれが実は一番幅を取っているのだが、紙ジャケのCDがどどーと並んでいたりする。ほら、紙ジャケのCDって再発が多いので、まとめてリリースされたりして、しかもこちらもいい加減大人だから大人買いみたいな感じで、Canとか揃えちゃったりするもんだからかさばるのである。

ということで結構な重量もあるし、実は重要な役割を担っているのであるが、如何せん何かの時には邪魔になってしまうのである。もうじき私も33歳。そろそろ腰が丈夫なままでいられる、とは自信を持っては言えなくなってくるお年頃である。これは一体どうしたものか。

ということでやはり私もDIY精神に則って自分好みの棚を作る日が来たのであろう、ということだと思う。以前実家でもあまりにも床をレコードの段ボール箱が占領してしまっているから、状況打破のためにでっかいキャスター付きの棚を作ってそこにレコードを入れて動かせるようにしたことがあるので、その経験を生かして是非やりたいところである。もうこれでいちいちレコ棚の前で足を踏ん張って棚を持ち上げる必要もないし、ちょいと幅広く作れば色々置けそうだし、と良いことづくめである。

んなこと別にここに書かなくても早いとこやれよ、と思われる向きもあるだろうが、構想だけでめんどくさくなってしまって実際やらなさそうな自分の性格を考えると、ここで宣言して自ら背水の陣を敷くことによって、自分を追い込む、という実にストイックな意図のもとにここに記しているのである。嗚呼、書いたからには次の休みにはホーマックに行ってスチール棚の材料とキャスターを買わねばならない。そう、こう書くことによってアクションへと繋がるのである。なかなか人間、手間隙がかかる、というか色々なプロセスを経ないと実行に移れないものなのである。

無論簡単にすぐ実行できる人もいるであろうが、あえて大雑把に断定したところでThe Wolfgang Pressの「Everything Is Beautiful」を聴く。4AD最初期のRema Rema〜Mass、という流れのメンバーとこれまた4AD最初期のIn Camera13 (Lucky for Some)(←このコンピは92年リリースだが、実はアメリカ盤はなんとTeenbeatから出ていた!)のメンバーが結成した、と言っても今の世の中ではそれがどんだけ意味を持つのかわからないが、そういったある意味4ADサラブレッドバンドの、2001年リリースのベストである。1983年から1996年くらいまでは活動していたようであるが、4ADというレーベルがどんどん成長して、色々なアーティスト達に注目が集まるようになっても、実にベテランながらも地味な存在だった彼らである。初期はへヴィなリズムに鋭いギターに、何とも歌いこなせていないけれども無駄にソウルフルなヴォーカル、というおおニューウェーヴって奴すか!という、しかもB級っぽいニューウェーヴって奴すか!という音なのだが、どんどんどんどんビートが打ち込みでがっちりしてきて異常なまでにダンサブルなナンバーまであって、と変化していったのだ。そういった流れがこの1枚でつかめるのはとても有難い。私はアルバム全部好きなのだが、ベスト盤、としてはこの後期の曲多めの選曲は正解であったように思う。考えてみれば初期でもAretha Franklinヴァージョンで「Respect」をカヴァーしていたり、と一筋縄ではいかない感じだったが、徹頭徹尾最後まで一筋縄では行かないままだったんだなあ、としみじみ痛感する次第である。でもその一筋縄で行かなさ具合が、良くも悪くもこのバンドの持ち味だったわけで、愛すべきバンドだったなあ、と涙するのであった。実はかなりポップなメロディを持つナンバーが多くて普通に名曲揃いなのだが、それをどこか隠しているような、もしくは捩っているような、そういうところもたまらない。ちなみにこのベスト盤の目玉としてはライヴテイクと91年のアルバム「QueerQueerのボーナスでついていたリミックスであろうが、前者はまるでLou Reedの「Walk On The Wild Side」のような優しさが滲み出していて、嗚呼本当に実は稀代のメロディメーカーだったんだな、と感動するし、後者は同僚M/A/R/R/Sの、というかColourboxのMartyn Youngがリミックスしていて、これが91年の音とは信じられない、もんの凄いドカドカのブレイクビーツリミックスで、嗚呼デジロック(!)よりも、ビッグビートよりも早かったんだな、というか早すぎるバンドだったのかもな、としんみりしたりする。思い入れがあり過ぎて長く熱く書き過ぎました。