Cristobal

世の中全てのことが必然なのかも知れないけれども、実はそれに意味を持たせるのは人間の傲慢であって、実はそんなに大したことない事柄の連続なのかも知れない。

そういった事柄が意味を持っている、というのは実はあなたの願いの反映なのであって、そう考えることによってあなたは幸せになれる、というだけなのである。物事はありたいがように、そのまま世の中に「在る」のである。それがどういう意味を持つか、ということは実に十人十色なのであって、それぞれにとって都合の良いような解釈が成り立つわけである。そいつを勘違いしてはいけないなあ、とか強気になっているのは酒の勢いなのか。

まあ、良くも悪くも人間気の持ちようなのだな、という結論に至ったところで(ビール1.5ℓ飲んでるからかなり勢いのみの結論だが)Devendra Banhartの「Smokey Rolls Down Thunder Canyon」を聴く。前作までは店に客注したり通販したりで入手していたのだが、所謂「フリー・フォーク」やらという大雑把で下らぬ(酒飲んでるから強気だな)ムーヴメントの勃興もあって、大分取り巻く環境も変わったのであろう、今では普通に店頭で安く入手できるようになった。実は前作はあまりのめりこめずにいたのであった。その前のYoung Godレーベルから出ていた作品群が、シンプルながらも幽玄な、しかもメロディアスな非常に深みのある作品だったにも関わらず、前作は何か表層的に色々やってみました、的な側面が拭えなかったのである(あくまで超個人的な話なのでどうぞお気になさらぬよう)。しかし今作では、何だか初期の変な(良い意味での)シンプルなストレンジさが復活しているように思える。やりたい放題は相変わらずなのだが的が絞れているというかなんというか。とくにポルトガル語詞曲の存在感が以前にも増していて、なんだかトロピカリア期のGilberto GillとかCaetano Velosoの作品群を想起させるような勢いがある。それが単に似ている、というよりは音のリヴァーヴ具合も相俟ってもろにその時代、みたいな感じになっている。そのリヴァーヴの中、英語詞、しかもバンドを率いている曲に於いてはまるでThe Doorsのような感じになっていて、更には歌い上げるロッカバラッドみたいなナンバーではすわ、Elvis Presley?みたいな感じになっていて実に新鮮な衝撃を受けた。それらも別に狙ったわけではなくて、自然にやったらこうなった、みたいな不敵な佇まいが感じられて、いやーやってくれるなあ、と。そう、このアルバムはDevendraさんの声の良さを存分に楽しめるアルバムなのである。正直、ここまで美声だとは思っていなかったが、この作品を聴いたらそれは確信に変わったのである。実に良い声である。しかもセクシー、とか言っても過言ではないような感じの。曲もメロディアスで練られていて、これは取り巻く環境も変わって、期待も増大している中で、それらに見事に応える充実に1枚である、と言っても良いであろう。しかしバックヴォーカルにVashti BunyanJust Another Diamond DayにLinda PerhacsParallelogramsってどんだけとんでもないことになっているのだ・・・、と嘆息をつかざるを得ない。