I Put A Spell On You

しかし映画見たり、深酒したり、なんだかんだやっているうちに、そういや夏は暑かったなあ、という気持ちになり、そしていつの間にか10月になっていたのであった。

今年もあと3ヶ月弱で終わりなわけである。この間の夏の間は、この暑さがずっと続いたら一体どうしよう、とか思っていたりしたのだが、まだ日本には四季のようなものはあったようで、ベランダで煙草を吸えば秋の匂いがするわけである。別に気取っているわけではなく、実際貴女は、貴方は、秋の匂いを感じたことはないか!?

言葉で言い表せないが、秋の匂いがあるのだ。もしかしたら煙草を吸うときにしか感じられないものなのかも知れないが、秋の匂いは明らかに夏の匂いとは違う。それを言ったらば、四季折々、煙草を吸うときにそれぞれの季節の匂いを感じることができる。嘘ではない。普通にしている時には感じられないかも知れないが、夜、煙草を吸うときには明らかに季節ごと、匂いが違っているのである。煙草の匂いではない、季節の匂いが感じられるのである。

もしこれが煙草の匂いと一緒になった状態でしか感じられないような代物だとしたら、今の禁煙嫌煙煙草吸う奴人非人扱い煙草のせいで世の中悪いことが起きる、的な集団ヒステリー状態のこの世の中ってやつぁ、随分と風流な心を忘れっちまったもんだなあ、と謎のキャラクターになって嘆いてみたい所存である。

まあ、全て気のせいかも知れないのであるが、この間確かに感じたなあ、秋の匂いって奴を。

とか言っているとあっという間に歳を取ってしまうのだ、10月には。そんな残り短い32歳の日々ながらも、Nina Simoneのベスト盤を聴く。ずーっと前からずーっと聴いているが、ここ最近もこないだのアルバムTo Love Somebody / Here Comes the Sunととっかえひっかえ聴きまくっていたら、「インランド・エンパイア」でも衝撃的な使われ方をしていて、まだまだあっつく聴いている。Verve時代の彼女の名唱を集めたコンピである。Jacques Brelのカヴァーやら「悲しき願い」やら耳なじみのある曲、ガーシュウィンの曲からトラディショナルまで、結構ヴォリュームたっぷり味わえるのである。曲によってがっつりオーケストラが入っていたり、逆にシンプルな編成だったり、と違いはあるものの、当然ながらド真ん中にあるのは彼女の、ソウルフルなヴォーカルなわけである。曲によっては撫でるような声になったり、冷たく突き放すような声になったり、とその表情豊かな声だけでも充分素晴らしいが、どの曲も、たとえ長尺曲でも決してダレることのないゾクゾクするような演奏も相俟って、実にカタルシスが得られるものである。なんかこう、アルバム全部揃えたいぜ、的な無駄なやる気が起きてくるくらい盛り上がれる1枚。ベスト盤は何種類も出ているし、私も数種類聴いたが、このベストが一番何かこの時期を満遍なく押さえているような気がする。