Just Like Heaven

「ロンドン・コーリング」という映画を見てきたのだった。しかし最近思うのだが、一応映画館に映画を見には行くのだが、ドキュメンタリー、しかも音楽関係ばっかり、という感じになってきているのはどういうことか。

とは言え、途中ばったり出会ったnaranjaさんと共に鑑賞したのだが、まあ、要はJoe StrummerBBCでやっていたラジオ番組を主なBGMにして、生い立ちからThe Clash以前のThe 101ers〜The ClashThe Clash以降を様々な知人やら友人やら恋人やら影響受けた人々の発言と映像でつづる、という展開がメインであった。

まあ、言ってしまえばそれだけである。Joe Strummerがどんな人間だったか、というのは意外に多角的に捉えられていてそこは面白かった。でもMick JonesもTopper Headon(生きてた!)も出てくるのに、最後まで連れ添ったPaul Simnonが出てこない、とかちょっとなんだか半端な感じがした。否、元メンバー全員出れば良い、ってもんじゃないけどJoe Strummerとの関係を考える上では一番のキーパーソンになるのではないか、とか思うのだった。

という風な感じで全体としてはまあ、ドキュメンタリー映画だから無理な展開があるわけでもなく、淡々と進む2時間強であった。でも、それでも、彼が亡くなる結構寸前に消防士のスト支援ギグに於いてMick Jonesと一緒に「White Riot」をやるシーンの映像にはぐわーん、とやられるのであった。それは別に映画としてどうこうというのではなく、いい加減歳喰ったルックスになった2人が、過去のわだかまりを解消してやっている、という事実から、人間というものは歳と共に色々なことがあるけれども、結局は水に流せるものなのかもな、ということを感じたりしたからであった。ってまあ深読みっちゃあ深読みなのは百も承知であるが。

と言う感じでまあ、「No Future」を撮ったジュリアン・テンプルにしてはお涙頂戴的展開になってないから、そこは良かったように思える。ところで個人的にはKeith Levineが生きていた!とかJoeの元恋人はそうかThe Slitsの初代ドラマーか、とかRichard DadanskiってそうかThe 101ersだったのか、PILとBasement 5って印象だったが、とかTymon DoggってYからもアルバム出してたけど、Joeのバスキング仲間だったのか、とかそういうThe Clashというよりはその周辺の話題で何故か勝手にあっつくなってしまったのだった。

で、全く関係なくThe Cureの「Kiss Me Kiss Me Kiss Me」を聴く。87年のLP2枚組の作品である。CDでも既に持っていたのであるが、ひょんなことからデラックスエディションを入手して聴いている。以前のCD化の際にはLPには入っているのにも関わらずカットされていた「Hey You!」が今回はしっかりと入っていてそれが嬉しい。思えば私がThe Cureを聴き始めたのはリアルタイムでこの作品である。それまではどんな雑誌見てもThe Cureは「暗い」とか「ビョーキっぽい」とか書いてあって、怖くて怖くてですね、意を決して当時新譜だったこれを聴いたわけである。これはバンドとして始めてRobert Smithの曲を皆で料理、みたいな実にバンドらしいことをやったアルバムらしく、それが多分このヴァラエティの豊かさにつながっているのであろう。実際1枚もののアルバムにしようとすると雰囲気が偏ってしまうから、敢えて全部入れて2枚組にしたらしいし。確かに夢見るような優しいメロディのポップナンバーから地を這うようなのっそりのっそりとした幻想的なナンバー、初のファンクナンバー、超へヴィなギターが唸るナンバー、などなどむちゃくちゃに色々なタイプの曲が入っているが、それらが決して散漫になっておらず、ぎゅっとまとまった感じがしっかりとするのは奇跡的なことなのかも知れない。これ以降の作品は結構LP2枚組とまで行かなくても大作揃いではあるが、ここまで博覧会的な作品になっているのはこの作品のみのように思える。デモやらライヴやらも、この時期の音源は聴いたことがなかったので、退屈するだろうか、とちょいと聴く前は不安であったがとても楽しめるのであった。