東京Shyness Boy

例えば通販で買ったレコードが全部ハズレだった時ほど死にたくなる時はないものである。

清水の舞台から飛び降りるつもりで熟考を重ねた末の注文だったのにさぁ・・・、というものである。「試聴すりゃ良いじゃん」という話であるが我がPCの通信環境ではそれも叶わず、寧ろ「試聴なんて男らしくねえぜ」的な無闇やたらなテンションでいつも臨む私なのである。して、たまにこういう悲劇が起きたりするわけだね。まあ、要は地元の店頭にしっかりと物が並んでいれば良いわけだが、まあないものねだりはもう止そう。

細野晴臣の「泰安洋行」を聴く。1976年の作品である。多分私以外の皆さんが既にお聴きになっている作品なのであろう。急激に彼の音楽に興味を持った私なのであるが、皆それぞれに彼のフェイヴァリット作品があって、そして皆それぞれに語れる、というのには心底驚いた。だから別に今更私が語るまでもないのだが、実に新鮮な音楽であった。何だか現実離れしていて、重い部分がない。というか地球上の重力から解き放たれたような。しかしそれでいてしっかりとアーシーな世界、というのは今まで経験したことのない音楽の世界であった。そしてどこにも属すことのできないような、見事な折衷音楽である。沖縄とかニューオリンズ、とか中国、とか色々その場所場所の要素はあるのだが、それらが全て渾然一体になってしまうとどこの音楽なのか、全く分からないのだった。しかしそれでも曲の骨組みはしっかりとしていて、かなりの高いレヴェルでポップスになっているのであった。どことなく胡散臭いところも含めて、愛らしい作品なのだなあ、と本当に今更ながら思い知らされた次第である。そしてインスト曲の、物凄い謎の音響工作にも度肝を抜かれたのだった。