Black River Song

ということで無事生還してきたのであった。山の夜は寒かった。ということはつまりこの暑い平地ではなかなか普段は気づかないながらも、秋が人知れずじわりじわりと近づいてきていることがわかったのだった、などと情緒あるようなことを書いてみると「アウトドア好き」って書くのと同じくらい好感度アップですかね、と嫌らしい意図のもとに書いてみたりしたのであった。

いや、そんなことはどうでも良い。

最近大型CDショップに行くと、こなれた感じの4つ打ちの音楽がかかっていることが多い。ダンスミュージックコーナーに行けば、何かいかしたねーちゃんがジャケットのハウスミュージックのコンピがわんさかあって、「乙女ハウス」なる名の下に売られている。

乙女ハウス、かー。ジャケとか概念とかは良いが、かかっているのを聴く限りいまいちピンと来ないなあ、と思っていた昨今、なんと「オネエハウス」というものがあるらしい。これはゲイのイヴェントなんかでかかる4つ打ち音楽のことを指して言うらしい。

これだ。「オネエハウス」の名の下にコンパイルされた音源は(あるのかもしれないが寡聞にして)聴いたことはないが、多分これはばっちり私の気に入るはずだ。否、どちらかというと我が家にある音楽の大体は「オネエ○○」としてまとめられそうなものばかりであるので、もしかしたら私が「オネエハウス」の第一人者になるべきなのか、ノンケにして、と我が家のErasure、Communards、Pet Shop Boys、Soft Cell、Dead Or Aliveといった方々が密集しているレコ棚の一角を前に腕組みして考えたのであった。あ、これはオネエハウス、というよりか、オネエレポップ、なのか。オネエディスコ、とか。まあ、ジャンルの話は私は明るくないのであまり深く考えたくはないのだが。

嗚呼、こんなんで良いのだろうか私。と悩みながらAngels Of Lightの「We Are Him」を聴く。「td君、入ったよ」といきなり店に入るなり仙台の某レコード店で薦められたのであった。この店は「Laibach入ったよ」とか「Nitzer Ebbのリミックス12インチ入ったけど」とか「Nurse With Woundの新作あるよ」とか、あまりにもあんまりなセレクトをおススメしてくるので、えーと、ありがたいよなあ。ということで元SwansのM. Gira先生のユニット、新作である。Swansも1987年、88年あたりからはかなり歌志向が強くなってきたのでこの路線はさほど驚きではない私ではあるが、Swans初期作品から考えればどえらい変化だよなあ、と。このユニット名でももう10年近くになるわけだが、今までの作品も何作か耳にしてきて実は、あまり好みではないなあ、とか思ったりしたのである、この私でも。しかし今作は、今までもっともとっつきやすい、という前評判(どこのだ)どおり、実にカラフルな(今までと比較して)作品に仕上がっているのである。相変わらずのバリトンヴォイスを聴かせるGira先生のヴォーカルもかつてなく伸びやかであるし、それを支えるバックもレーベルメイトのAkron / Familyを始め、しっかりとわきまえた感じで、曲によってはグラムロック調のリフ主導ナンバーだったり、サイケデリックなオルガンが印象的だったり、カントリー風だったり、どっか外れたような牧歌的なフォークナンバーだったり、と実にヴァラエティ豊かである。まあとは言えどもどっしりと重厚であるのだが。それでもその重厚な感じのままフットワークが軽くなったような、そんな迫力ある作品に仕上がっている。何かミニマルなフレーズの反復みたいな部分が印象的で頭から離れないので大変だ。アートワークはDeryk Thomasの作品を相変わらず使用しており、これも大変だ・・・。