私はあなたに所属したい

今日車を運転していたら工事中の箇所があった。看板を見ると「仮説道路」と書いてある。

ということは今私が車で走っているこの道路はあくまで仮説なのであって、公認された道路がまたどこかにあるのか、それともできるのか。ということは今ここを走っていても、私の目的とする場所へたどり着くことができないかも知れない、ということなのか。ということで慌てて次の交差点でハンドルを切って違う道へと抜けたのだが。

まあ、上記に誇張はあるにしても誤字はいけない、誤字は。「仮説道路」はおっかなさすぎる。どこへ行くかわからないではないか。

The Chillの「The Chill」を聴く。立花ハジメ屋敷豪太、元Natural Calamityのクニ杉本、そして女優の紺野千春によるバンドのデビュー作である。なんでもハジメさんが「オータナティヴな」ギターを弾きまくっている、ということから楽しみであると同時に、いまいちのめり込むことが出来なかったLow Powersの二の舞だったらアレだなあ、とか期待と不安半々で聴いてみてみたのだが、これは吹っ切れまくったとても良いアルバムである。というか私好みの音楽である。B-52'sの故Ricky Wilsonの変則チューニングに倣って奏でられるギターがまず奔放すぎる。どこへ飛んでいくのかわからないようなギターの音色が、不安を感じさせるよりも寧ろこれからの冒険に向けてワクワクさせてくれる。しかしその奔放なギターを中心にするのではなく、どの曲もしっかりとポップに結構きっちりと構成されていて、安心して聴ける。曲によってはSonic Youthの「Daydream Nation」を彷彿させるような空気感の曲もあったりして、すんなりと入り込めるのであった。そして、リズム隊ががっちりしているのは言うまでもないとして、紺野嬢のクールなヴォーカルが意外と言えば意外であったのだが、全体のバランスを考えるとこの声質は凄く良い選択だったなあ、としみじみする。Dip In The Poolの甲田嬢(喩えが古くて申し訳ないですが)を彷彿とさせるクールな声と、荒れ狂っているギター、しかし全体としては整合感がある、という何だか不思議な音世界が繰り広げられている。「Woo Child」や「The End Of The World」そしてScritti Polittiの「Hypnotized」(20秒くらいで終わるが)というカヴァーもナイス。そしてラストの15分強の泣けるナンバーの展開にぶっ飛ばされてしまうのであった。ちなみに人力エレクトロみたいなビート(「Rock It」みたいな)をたたき出したりもする豪太ドラムスは、やっぱり格好良いなあ、とかハジメさんの詞は素晴らしいなあ、とかそれぞれ聴き所がありすぎて困ってしまうような、そんな贅沢な悩みを齎すアルバム。私は断固支持したい。