I Wanna Destroy You

いざ休みも明けてまた日常生活になって、しかも相変わらずのなんともマザファカな日常になってくると休みだった先週が恋しくなったりするわけである。

しかし実際先週は、若干休みを持て余し気味だったところも否めないので、果たしてそんなに恋しいのだろうか、と自問自答したりしてみたが、気づいたのである。「休み」というものを想像したり、思い出したりすることによって癒されたりしているのではないだろうか自分。

まさかそんな、とか思ったりもしたのだが、実際問題、行ったら行ったでなんだか暇を持て余しそうな「温泉」に関しても、「温泉に行く」ということを夢想するだけでなんだか癒される、というか幸せな気分になったりしている自分を以前発見したりしたので、あながち的外れでもないように思える。

そう考えると、なんと自分は安上がりなのだろうか。脳内でのイメージだけで何だか癒されたり楽しくなったりしているわけで、実働を伴わずとも心の平和が得られている、という結論に達するわけである。まあ、それは単なる妄想野郎、と一言で片付けられてしまいそうなものであるが、妄想が全くリアリティのないもの、実際にはありえないようなものを脳内でイメージするのに対して、私の今回の脳内イメージは意外に実現可能なものであって、そしてまた実働よりもイメージの方が充実したもののように思えるところが大きな違いなのである。

って別にどうでも良いことを無駄に力説してしまった。でも実際にしないとダメなものも勿論あるわけだ。そこら辺は安上がりではすまないのだ。だからThe Soft Boysの「Underwater Moonlight」を聴くのだ。80年リリースのセカンドにボーナストラックに、ボーナスディスクを追加したデラックスエディションなぞを聴いている。実は先週から異常にThe Soft Boysブームが私の中で起こってしまって、それは最早抗えない熱波のように私を襲っているのだった。Robyn Hitchcockや、後にKatrina And The Wavesで大ブレイクするKimberly Lewが在籍したことでも御馴染みの彼らであるが、活動当時のイギリスはパンクの嵐冷めやらぬ頃だったわけで、どうにも彼らみたいにしっかりしたハーモニーの、それでいてパワフルなギターロックバンドには居場所がなかったらしい。しかし今聴けばそれが俄かには信じられないくらいにメロディはポップだし、ハーモニーは完璧だし、ギターはエネルギッシュにカッティングを刻むわ、サイケなアレンジは効いてるわ(「ネオサイケ」なんて形容もあったぐらいだしな)で、もう非の打ち所がないロックンロールである。Captain Beefheartがよく言及されているようだが、あんな感じでは全然なく(少なくとも表向きは)、寧ろThe Beach BoysとかThe Beatlesとか、に近いと思うのである、これらバンドもよく言及されているようだが。Syd Barrettのソロをガンガンにエネルギッシュにやったらこうなるかもなあ、とかREMみたいになってもおかしくなかったのかもなあ、という音楽である。でも歌詞が何だか凄く変だ。どれくらい変か、と問われれば普通にこういうのを思いつく人間の頭はどうなってるのだろう、と1時間くらいは悩み続けるような、そういう感じである。でも楽曲は物凄く人懐っこいし、何よりパワフルで、且つ繊細である。ボーナスディスクも初期ヴァージョンをガンガン収録していて、普通こういうのは余計だなー、とか思ったりするのだが逆に、へーこれがこんな風に、と興味津々になってしまえるのであった。さすがに脳内イメージだけでは、こういった興奮は得られないのだよなあ、というかこういうものが私にとってリアルなものなのか、という物凄くでっかい問いまでをも引っ張ってきてしまうような、まあ何言ってるかわからなくなってきたが、こういう音楽にはむっちゃくちゃ弱い私は相変わらずなのであった。