Never Be The Same

こうも暑いと、なかなか熱いものをこさえるファイトも起きないものなので、冷製パスタをこさえてみたのだった。

作り方は実に簡単である。トマトを湯剥きして種を出して適当な大きさに切る。ボール内に入れてそこにオリーヴオイルやらバジルの千切りやら塩やら胡椒やらにんにくのすりおろしやらを投入して冷やして、表示時間よりちょっと長めに茹でたカッペリーニを氷で〆て混ぜ合わせる、というもし台所に背さえ届けば、やはり3歳児でも作れそうなメニューである。

以前我が家の来客に振舞った際には4人分だったが故に、ルックスがド迫力過ぎて、思わぬ笑いが爆発したものであったなあ、と懐かしく思い出す。かように、冷製だのと言う言葉を聞くと繊細なイメージがあるかも知れないが、むしろ洋風冷麦のような、どかーんとワイルドな料理なのである、ってこの認識間違ってるかもしれないのだが。

ちなみに我が家ではここにツナのカンヅメを入れたりする。こうすると更に美味い。何と言うか食べ応えが出る、というか。そして今回はいつも隠し味的にはちみつを入れていたものであるが、代わりにメイプルシロップを入れてみたのだった。まあ、これは別に工夫というよりは単にはちみつが発見できなかったから、というやむにやまれぬ事情故、なのだが、これが実に功を奏して、大変に味わい深い一品に仕上がったのだった。

でこう美味しく出来ると、次はここをこうしてみよう、とかこれを入れたらどうなるのだろう、とか、またしても実験精神に火が点けられてしまうのだから困りものである。自分は、今まで料理好き、だと思っていたのだがカレーの件も含めて、単なる実験好き、ということなのではないか。ふと考えてみれば、色々混ぜ合わせる料理が好きである。うーん、どこまで行ってもやはりニューウェイヴ好きは、何に於いてもニューウェイヴ、ということなのだろうか。

ということでThe Flying Lizardsの精神でもって、今後も料理に臨みたいところである、ってことでUlrich Schnaussの「Goodbye」を聴く。ドイツの所謂エレクトロニカの人、とかいう触れ込みの彼の新作である。寡聞にしてアルバムを聴くのは初めてだったが、何とも不思議な感覚に襲われるのであった。これは私が91年とか92年とかに大好きだったような音楽の、リマスタリング版、なのではないだろうか、という思いをどうしても抑えることができない。実際には思いっ切り新作なのであるが、想起される言葉群としては、「シューゲイザーLushCocteau Twins4ADMy Bloody Valentineの「Loveless」〜Slowdive〜Curve」というものばかりなので、不思議なデジャヴを感じる。最早リズムトラックを覆い隠さんばかりの何層にも重なったギターノイズ(とギターノイズに聴こえる音)と、儚い男性ヴォーカル、女性ヴォーカル、呟かれるメロディ、緩やかに動くコード進行、と本当にこういうのに熱狂したなあ、という世界である。でも、あえてそういうことを今やる、というのが凄く潔いのかも知れない。全体的に浮世離れした感覚が徹底していて、逆に凄味を感じるほどの音になっているし。そして所謂90年代のこういう音楽との決定的な違いは、どこかこちらのUlrichさんの方が不思議と閉塞感を感じるところである。良い意味でもなく、悪い意味でもなく楽天的な世界になっていない、というか。それを時代の違い、と片付けることも可能かとは思うのだが、そこに何かUlrichさんならではのものを感じるのであった。しかし思えばMorrミュージックからは、レーベルのアーティスト総出によるSlowdiveのトリビュート盤みたいなものBlue Skied an' Clear: A Morr Music Compilationも出ていたし、「Feedback To The Future」なる恐ろしいコンピFeedback to the Futureも昔出ていた。ドイツの所謂エレクトロニカ系のアーティストにとってシューゲイザー(とか呼ばれていたバンド)の与えた影響ってでかかったんだなあ、と再認識させられる作品である。ちなみに最近もそういやこういうの聴いたよな、と思い出したのはBlonde Redheadの「23」23であった。そういうことなのである。そしてそしてそういえば、この間のUlrichさんのシングルには、このアルバムを聴いて誰もが名前を思い出したであろうCocteau TwinsのRobin Guthrieによるリミックスが入っていたりするのであった。間違いなさすぎる・・・。