River Song

いつの間にやら私のインターネットの「お気に入り」コーナーには、Yahooの外国為替レート表が入っている。

これは例の激ヤバ再発専門レーベル、Vinyl On Demandとのやり取りの際にユーロを円に換算するために入れたものである。USドルならある程度の想像はつくのだが、ユーロともなると何が何やら、という事態になってしまい全く数字と日本円とが結びつかず、困ってしまったのである。

以来、何故か新聞の経済欄に目を通すようになってしまったり、G7の会談で円安ユーロ高とかの話題になっていると自然と耳をそばだてたりじっくりと記事を読んだりしてしまうようになった。こう考えると今の全面的な円安傾向というのは、果たして日本国内の経済情勢に良い影響を与えているのだろうか。景気回復、とかいう判断の根拠にはこの円安による輸出の増加が挙げられているのだろうか。そしてそれが進むと今度は経済摩擦等が起きるのではないだろうか。とかぼんやり考えていたりして、あらま、いつの間にそんなことを考えたりするような人間になったのだろうか、と我に返って不思議な心持がする。

まあ、そんなに専門的に勉強したりしているわけではないし、勿論そんなに詳しいわけでもないから間違って認識していたり、はたまた知らないことの方が多いわけである。でも、経済の動き、というものは実にデリケートで複雑で、それ故に面白いものなのだなあ、と最近思うのであった。

しかしそんな風に考えるようになった事の発端はレコードなわけで、そこら辺が何ともとほほ、というかどんだけレコードというものが己の思考をつかさどっているのか、と呆れるばかりである。

でもやめられないのでMeg Bairdの「Dear Companion」を聴く。Espersの女性ヴォーカルのソロアルバムである。グループ本体は、素朴で美しいながらも、何か裏にあるんじゃないのか、と疑わざるを得ないような、そういう逆に透明すぎて見えないものがありそうな気にさせられる摩訶不思議且つ美しい(アシッド気味)フォークな音楽を聴かせてくれるが、こちらの彼女はどこまでも透明な、それゆえに豊潤な、素直なフォークミュージックを聴かせてくれる。今作以前にもグループとは別行動のユニットでトラッドナンバーばかりを取り上げたアルバムLeaves From Off the Treeを出しているが、今作でもトラッド、Jimmy Webbなどのカヴァー、オリジナルと取り混ぜている。そしてそのどれもが一直線上に並列化されていて何ら違和感がないのだから、その統一感には恐れ入る。というか彼女の素直で伸びやかな歌声が全体を締めているからそういう印象なのか、それとも楽器がアクースティック・ギターとダルシマーのみ、というシンプル極まりない編成だからなのかは分からないが、飽きることなく楽しめる1枚になっている。それにしてもオーヴァーダブで彼女の声がハーモニーヴォーカルでも聴こえてくると、陳腐な表現ではあるが実に癒されるのであった。Vashti Bunyanとかという比較は死ぬほどされそうであるが、私は何故かCreation〜4ADと渡り歩いたHeidi Berryのシンプル版、という非常に分かりづらい喩えを思いついたりしたのであった。