Untitled Mix

職場と家が遠くて車通勤、という私である。

何でも「家と職場の距離が10マイル増える度にストレスも5%増し」という研究結果もあるらしいのだが、まあ、それはそれである。確かに朝とか結構際どい出勤のタイミングになってしまったりもするのだが、まあ、それはそれである。

逆に多少距離があることによって、結構リセットモードになって帰宅したりできるのが有難いといえば有難い。寧ろリセットどころかイレイズしたいような衝動にも駆られたりもするのだが、一応社会人としてそれはいかんだろう、と多少の理性でもって防いでいるのであった。

なかなかにストレスを溜め込まない性質の私なので(大体のストレスは「地獄に落ちろー」と「犬に喰われろ」と「こいつ良い死に方しないな」で解消できる、って一番タチが悪いかも知れないが)、この程度の距離を音楽を聴きながら車で走ることによって、丁度良いリセット加減になるのであった。逆に近いところに住んでいた時はわざわざ遠回りして帰宅する、という何だか変なことをしていた私であるから、今はちょっと真人間である。

ということで車内ではCoaltar Of The Deepersを聴いたりしていたのだが(ところで我が家にあったはずの「Submerge」というアルバムが行方不明になってしまっている。お心当たりの方、発見された方はご一報、若しくは確保をお願いしたい)、リセットしたからBob James Trioの「Explosions」を聴いている。私が持っていた彼のイメージはフュージョン界の大御所ピアニスト、というものだったのだが、この1965年にESPからリリースされたアルバムはそのイメージで臨むとぶっ飛ばされること請け合いである。私はぶっ飛ばされた。ベースにBarre Phillipsを迎えたトリオによる演奏が中心なのだが、数曲Robert AshleyとGordon Mummaが作曲とか電子音で参加している、エレクトロニクス+ジャズトリオ、という謎の1枚である。当然ながらビシビシ電子音が飛び交うのか、と期待するのだが、これがまたさほどではない。かと言ってそれが不満か、と言うとそんなことは全くなく、寧ろ逆に抑制が効いた演奏と相俟って、非常に滋味深い音像を作り上げているのだからたまらない。まずはトリオによる演奏が、実に静謐で、ビートも微妙にずらしつつ絡み合うような、そういうスリリングな演奏なのである。何と言うか、控えめな主張具合が逆に全体を際立たせている。Bob Jamesのピアノも要所要所を押さえたフレージングで決して冗漫に走らない。そこにラジオの音を回転数を変化させつつ絡めたり、彼方で飛んでいるような電子音などを挟み込んだりしてくる、Ashley、Mumma両氏のセンスにも唸らされるのであった。何だか「こんなことやってますよー!」と声高に主張するのではなく、そういったものは単なる一要素として組み込み、結果としてトータルのバランスに重きを置いたような、そんなスリリングなアルバム。ベースと電子音の絡みなど、ゾクっとする瞬間が何度もあってこういうのも久々であった。