Jesus Was A Cross Maker

昔、「世界の料理ショー」という番組をよく見ていたものである。

何気なく、小学生の時にぼんやりとした時間に適当に放送されていたものであるが、グラハム・カーという料理研究家が軽妙なトーク(吹き替えもまた軽妙)でガンガンに料理を作り、スタジオに来ているお客さんの中から1名引っ張ってきて一緒に試食、というスタイルの番組であった。

で、そういうものもあったなあ、とか思っていたのだが最近スカパーで「新・世界の料理ショー」というものが放送されていてびっくりした。これは90年代に作られたものらしい。しかしグラハム・カーの軽妙なトークと軽妙な吹き替えは不変で感動したものである。感動は感動であるが、衝撃だったのは、毎回「以前このメニューはこんな材料でこんなカロリーだったのですが、今回はこんな材料で、ほらこんなにヘルシーにカロリー減!(スタジオからどよめきと拍手)」という展開になるところである。

そうか、ヘルシー志向、というのはこういうところまで来ているのだなあ、と思うと同時に、これはまるで以前の行動に対する罪滅ぼしのような感じなのか、という思いも同時に起こったのであった。実際グラハム氏は自責の思いも込めてこういう番組展開にしているらしいのだが、これは別にグラハム氏のみならず、もしかしたら世界全体、何事に対しても昔の行動に対する罪滅ぼしで動いているようなものなのかも知れない。

禁煙ムーヴメントしかり、地球温暖化食い止めようムーヴメントしかり、そういうことを声高に叫ぶ人ほど昔色々やってました、ということを逆に宣言しているようなものである。それが悪い、というわけではないが、人間という生き物はサルでもできる反省を繰り返して生きていくものなのだなあ、ということを確信させられるものである。

と「世界の料理ショー」ネタでここまで大きなネタにしなくても、と思うのだがNag3は基本的に毎回そういう感じなのである意味王道なのである、とメタ的な展開に。ちなみにどうでも良いトリビアだが、Simply Redのミック・ハックネルはお料理好きで、夢はグラハム・カーのように自分の料理番組を持つこと、と86年くらいのインタヴューで語っていた。明日の飲み会で早速使えるネタですね!!

あー下らぬ。Judee Sillの「Live In London」を聴く。今回はBBC用の発掘ライヴ音源である。この間の発掘音源「Dreams Come True」だけでもびっくりだったのに、こんなのもあるとは。普通こういう発掘ライヴ、とかにはあまり食指が動かないクチの私ではあるが、Judee Sillともなれば話は別である。で、このライヴであるが、1972年3月、4月、1973年2月、の3回の収録である。当然ながらファーストとセカンドの曲を演奏しているわけであるが、まず何よりビビらせられるのが、彼女のヴォーカルである。全くスタジオ盤と同じなのである。普通は少しくらいの違い、歌いまわしの変化とかあって当然なのだが、全くない。だから途中で、これってライヴだよな、と確認してしまうほどの安定したヴォーカルである。しかしバッキングはギター1本、もしくはピアノのみ、で明らかにスタジオ盤とは異なるので、あ、やっぱライヴなんだよな、と確信するのであった。そう、スタジオ盤で狂おしいほどの響きを聴かせるストリングスとかオーヴァーダブとか、そういうものを除いたごくごくシンプルな演奏で、純粋に曲の良さを感じることができる。勿論その曲の素晴らしさはスタジオ盤でも嫌と言うくらい確認できるのだけれども、それ以上、ということである。フィンガーピッキングスタイルの彼女のギターも凄く良い演奏で、そうか、あまり認識していなかったけれどもフォーク、とも言えるんだなあ、としみじみ実感。しかし天才というのはあまりにも早く我々の前から去ってしまうものなのだなあ、とライナーを読みつつしんみりとしてしまったのであった。