Bring The Noise

走行距離10万キロを超えた我が愛車であるが、最近走行中に「シャカシャカシャカ・・・」と音がうるさくなったり、ブレーキを踏むと漫画の擬音のような「キキキィー」という音がするようになった。確かに言われてみればちょいとブレーキの効きが甘くなったような。

ということで来月には車検も控えているというのにブレーキパッドの交換のためにディーラーに持っていったのだった。日曜日ということで作業時間が1時間くらいかかる、と言われたがいかんともしがたいので待つことにした。ただ、ここまでかかるとは思っていなかったので読みかけのマゾッホの小説も持って来ていなかったし、そして昼食も済ませていなかったのである。

そのディーラーの待合場、というかロビーは広く、てとても居心地が良いのであるが、とても手持ち無沙汰である。ということで置いてある「週刊文春」を読み、金持ちがなんかやましいようなことやるとどうしてもそいつがどんだけ金持ちか、ということを強調するような報道に走るなあメディアは、やはりルサンチマンの表れみたいなものなのだろうか、別にグッドウィルの会長がどんだけ金持ちでどんなパーティやってどんな家に住んでようがまるで興味はないが、確かに金持ちのくせになんかやましいことやりやがってるっぽいってのは、本当・・・殺したくなるよな、と考えたり、「日経エンタテイメント」って一体どこをどう読めば面白いのか全くわからねーな、どこに読ませどころがあるんだ、ふざけるな、とか段々ボルテージが上がってしまったのは空腹だったからであろう。

で空腹のまま、何を読んでも面白くないからずーっと他の客のウォッチングをしながら過ごすこと1時間強、やっと車が仕上がった時には気絶寸前の勢いで空腹で、最早全てが上の空であった。やはり私の場合ダメだ、空腹だと。週刊誌の記事のどれを読んでも苛立たしいし、どんな人を見てもこの腐れ小市民どもがー!と何ら根拠のない不快感ばかりが募るのであった。

今の私の状態?今はその飢餓地獄を抜け出し、つけ麺2玉食べたから菩薩のように穏やかな表情をしながら、愛とか花とか夢とかについて考えています。人間、空腹によって思考まで変わってしまうのである。ということで穏やかにPublic Enemyの「It Takes A Nation Of Millions To Hold Us Back」を聴く。88年リリースのセカンドである。私もこれはほぼリアルタイムで何故か聴いていた。ここから健やかに育っていけば今頃ヒップホップどっぷりだったのではないか、と思えるくらいとんでもなく衝撃を受けたアルバムである。ご存知のようにその後どうにもこうにもすくすくと健やかには育たなかった私ではあるが。名盤の誉れ高いアルバムであるが、まさにその通りである。Chuck DFlavor Flavの掛け合いは2人の声質の違いもあって大いにメリハリがあって実に聴きやすい。勿論彼等がラップしていることはアフリカ系アメリカ人として生きる上での必要とされる強さや、世のシステムについての批判だったり、とそういうことなのであるが、私のような日本人としてはまずそのライミングのキレの良さとかに感動させられる。そして勿論、物凄く強烈なトラックが何よりも最高である。JBネタとか色々散りばめられているが、徹頭徹尾ストロングスタイルなブレイクビーツは今聴いても、全然20年近く前ということを意識させずに、ただただ格好良いのである。何か全体的に凄く生々しい感じをビンビンに受けるのだが、それは私だけであろうか。多分マジメにヒップホップを聴いているような方だったら、この作品をきちんと何かの系譜の中に置くこともできるのだろうが、如何せんつまみ食いのリスナーである私にはそれはできない。しかしあらゆる点から考えても、文句のつけようがない作品である。