How Distant Your Heart

tdsgk2007-06-13


私の周囲には音楽好きの友達が大変に多いので、そういった友達が新しく紹介してくれるお友達も音楽好きなことが多い。で、「tdさんはどんなのが好きなのですか?」と聞かれることが多いが、とてもそれは難しい質問なのである。

基本的にはロックンロール、と答えることにしているのだがどうも定義が難しい。私はロックンロールしか聴いていない、と公言して憚らないのだが、どうもその言葉はある種のステレオタイプを一般的には指しているようであって、実に難しい。

自分の好きな音楽を答えられるのは素晴らしい、と確か昔瀧見憲司氏がMisty Oldlandのインタヴューかなんかで言っていたように思うが、その観点から行くと私は全くもってダメである。今も某中古CD屋にある取り置きはLuc FerrariとSheena And The Rocketsベスト、とかいう組み合わせだったりする。最近家で聴いているのはCorruptedとVon SudenfedとGodfathersとX-Legged Sallyと黒色エレジーだったりする。車で聴いているのはYUIのマキシとBruce SpringsteenのライヴとDes'reeとThe Damnedだったりする。これはロックンロール以外の何物でもないと思う。だから好きなのはロックンロール、と答えるようにしているのだ。正しい。正しい、と思うのだが・・・。

そんな私もこの最近のとっ散らかりぶりはマズイかも、とたまに客観的に思ったりする。皆が皆、スクーターズとMartha And The BanderasとWhitehouseとPaul HaigとFingers Inc.を同列で語れるような、そんな名古屋出身の友人のような人ばかりとは限らないのだ。ということで自分の音楽的なルーツは何か、とちょっと考えてみたりした。ラジオのエアチェッカーだった小学生時代、最初に買ったミュージックテープはCulture Clubの「Waking Up With The House On Fire」、次がDead Or Aliveの「"Youthquake"」、次はBruce Springsteenの「Born In The U.S.A.」・・・。最初の7インチはPropagandaの「Dr. Mabuse」・・・。LPはThe Style Councilの「Our Favourite Shop」、次はKingの「Bitter Sweet」・・・。そうか、最初っからある程度のとっ散らかりぶりは見受けられるので、そのままスクスクと進んできた、ということなのであろう。まあ、上に挙げた作品群から考えられる言葉と言えば「ゲイ、エレポップ、アメリカンロック、UKロック、ブルーアイドソウル」とかいうものであろうか。不気味なまでに今の今まで変わっていない傾向だ・・・。その傾向に色々付け加わって今の私の嗜好があるのか、と思うと何となく深い靄は晴れたように思えるが、やはり好きな音楽を答える際には「ロックンロールです」としか言えない、そういう運命にあることも同時に気づかされたのであった。

ということで今はRobin Guthrie, Harold Buddの「After The Night Falls」を聴いている。もう1枚「Before The Day Breaks」Before the Day Breaksという作品と対になっているアルバムである。このお二方の共演、と言えば86年の「The Moon And The Melodies」The Moon and the Melodiesがあるわけだが、今回はCocteau Twinsの他のメンバーはおらず、その分純度の高いコラボレーションがなされているように思える。非常に面白いのがどちらもそれぞれの作品では叙情的なフレーズが持ち味のような、そういう方々なのに、このコラボレーション作に於いては非常に抽象的な音作りになっているのだ。Robinのギターもあくまで効果音のようにところどころに置かれているような感じであるし、全体を覆う何層も何層もヴェールがかかっているような、そういう「重くないドローン」的世界もかなり新鮮である。時折ハッとさせられるような鍵盤やギターのフレーズやらはあるのだが、結局は全てその厚い層の中に溶け込んで消えていくような、中心があるのかないのか、はたまた重心があるのかないのか、判然としないたゆたう音楽である。でもそのスケールの大きさ、突然ビートが刻まれた時のようなカタルシス、と言ったらここ最近なかった類のものなのでついつい何度もリピートしてしまうのであった。