Rendezvous

人間ってのはもともとはとてもふくよかなものだと思うのだ。とくに生まれた瞬間なぞは。

これは物理的なもの、と言うか体型的なことではなく、何と言ったら良いのか、内面的なものに関してである。しかし歳を取るにつれてそのふくよかなものは削がれて削がれて、どんどん細くなっていくのであろう。

勿論途中、ふくよかさをある程度取り戻したり、そしてまた削がれたり、ということを繰り返していくのである。そのふくよかだったものは細くはなるが決して消えない。非常に抽象的であるが、今頭の中にあることを言葉にするとこんなぼんやりした言葉の羅列になってしまうのだった。

ということで生きる上で大事とか、色々言われていることというのは実は結局、何らかの形で、そのもともとふくよかだったものを消さないために必要なことなのである、と言い換えることもできるのではないだろうか。何らかの形で、ある程度のその内側の「ふくよかだったもの」の形を保つために必要なもの、それが生きる上でマストなことなのであろう。

ということで最近削がれまくっているからこんなことを考えてみたりしたのだ。でも私はなんとかそのふくよかさを保てるのである、Buck-Tickのニューシングルとかを聴いて。これがまたとんでもない名曲なのでぶったまげる。実はBuck-Tickはここ何年かで異常な引き出しの多さを誇るバンドになってきているのである。前作も所謂ゴスだの何だの言われる世界をしっかり構築しているが、今回のこの新曲は異常なまでのポップさで駆け抜ける、強いて言えば「キャンディ」路線に近いくらいの抜けるようなメロディとすっきりしたエイトビート、一度聴いたら二度と忘れられないコーラスで攻めてくるのである。でも今までこんなにスッキリした音作りもなかったので不気味なまでに清々しいのである。またカップリングにはメジャーデビュー盤収録曲をセルフカヴァーであるが、これも自然な演奏、解釈になっていて、同一メンバーで20年というキャリアを誇るバンドであるのにデビューしたての頃のような瑞々しさが保たれているのである。ということで物凄くポップなナンバーであるのに、逆にBuck-Tickというバンドの凄味をビンビンに感じさせられる名シングルである。昨日から何十回リピートしたかわからないくらいに聴きまくっているが、全く飽きが来ないのも不気味。久々に音楽のマジックを感じたりしてふくよかさを今日も保つのであった。