So Long, Marianne

過日、友人と夕食を食べようとしていたら、当日になってその予定が流れた。

別にそれに関してはまた新たに仕切りなおしすれば良いだけのことなので、残念ではあったがそれは良い。しかし家にも外食してくる、と言った手前、さてどうしようか、折角だから何か食べよう、と思ってラーメンを食べたのだった。

そこまでは良かった。ただ問題は車の中ではBruce Springsteenが「誰もが皆飢えた心を持ってる」とか熱唱なさってて、そのボスの声に煽られたかのように、車をずーっと走らせて宮城県の端っこ、白石のブックオフまで来てしまっていたのである。

何だかしょぼい品揃えで、ちょっと良いなと思うものには1950円とかいう人をバカにしているような値段しか付いていない。激昂したがJohnny Thundersの「Hurt Me」が1000円だったので、それを購入して帰ってきた。

その帰り道でもボスが「アトランティック・シティで今夜会おう」とか熱唱なさっていたのでこれまた熱に浮かされたように家に帰ってきた。だからジョニサンの出番はなかった。ということでやっと次の日に家で「Hurt Me」をCDプレイヤーに入れたのだった。

すると何だか哀愁のメロディが流れてくる。ほほう、こんなことやってるのか、いや待てよ「Hurt Me」ってアクースティックセットではなかったか、と思いながらいるとどこかで聴いたことがあるメロディである、よく聴くと。これはロシア民謡を下敷きにした「Those Were The Days」邦題「悲しき天使」ではないか。なになになに、と思い、ディスクを停止し、盤面を見るとそこには思いっきり「Leningrad Cowboys」と書いてあった。

白石まで行って、Johnny Thunders買えてまあ良かったな、と言って中身がLeningrad Cowboys。あまりと言えばあまりの仕打ち、である。しかもよりによって何故Leningrad Cowboysなのか。何故間違えたのかブックオフ白石店の店員。否、前もあった。CrepsculeレーベルのChrist YatesのCDなぞ発見したので(あれはブックマーケットだったか)喜び勇んで帰宅したら中身がJohn Cougarの「American Fool」だったこともあった。何故よりによって「American Fool」なのか。あれにも愕然とさせられたが、今回の方がトホホ具合では比類なき感じである。しかも白石店にクレームの電話したら「返品受付けますのでお持ちください」ってさあ・・・。よりによって最果てのブックオフでそんなことが起きてしまうとは、私にもヤキが回ったか。

そんなやるせない感じの最近であるが、Leonard Cohenの「Songs Of Leonard Cohen」を聴く。リマスターされてボートラ付いて歌詞まで付いて、という感動の再発である。Cohen氏のアルバムは数枚を除いて全て持っているが、このデビュー盤だけはなぜかアナログで持っていたのでCDで聴く機会は実は初めてである。John Simonがオーヴァープロデュースしやがって、みたいな感じで本人も仕上がりには満足していないようであるが、それでもやはりこのアルバムが名盤であることに変わりはない。というか代表曲ってやっぱりこのアルバムに一番がっつり入っているのか、という感じでもある(個人的にはあまりそうは思っていないのだが)。基本的にはアクースティックギター一本で彼のモノトナスな美声が響き渡る荒涼としたフォークの世界である。しかしどの曲も過剰なまでにセンティメンタルな旋律を持った曲ばかりで、しかも不気味なことに一度聴いたら忘れられない、付きまとうような曲ばかりなので戸惑う。John Simonもまあ、苦労してプロデュースして批判されて可哀想な気もするが、それでも女性ヴォーカルの導入とかはCohen氏の声との対比も実に良いし、ちろっと鍵盤が入ったり、とかそういう小技も、他の作品では小技があまり感じられない朴訥とした世界なので逆に新鮮だったりする。ボートラも普通にこのアルバムに入ってても何らおかしくないような、そういう曲なので元々のアルバムをCDとかアナログででも持っている人にも、是非おススメしたい再発。しかしこのデビュー時、彼は今の私と同じ年齢なのであった。あー俺何やってるんだろう、とか思わされたりもした。デビューでもするか。