I Die

私の好きな飲み物にキリンのNUDAというものと、クリスタルガイザーのスパークリングレモン、というものがある。

どちらもノンカロリーの炭酸水で、クリスタルガイザーの方はレモン風味がある(無果汁だが)。NUDAの方は以前とはちょっと味が変わっていて飲みやすくなっている。いずれにせよすっきりと飲めるので、リフレッシュのため、とか喉が渇いた時、とかにはよく飲んでいる。コーラとかはちょっと甘くて苦手だなあと感じる私としては、大変に嬉しい飲み物である。しかし上で無防備に「リフレッシュのため」とか使っているが、なんか恥ずかしいな。

しかし、品揃えの移り変わりの激しいコンビニに於いては、前まであったのにもう置かれていない、ということが最近多発している。この間なぞは以前確かに置いてあったはずのコンビニを2軒ハシゴしたのに発見できず、喉がからからの状態で帰宅したことがあった。他に飲みたいものは最早ビールしか発見できず、運転者の私としては何も選べなかったのである。

しかしこうやって自分が「好きだ」というものが消えていってしまう事態、というのは色々な側面であるだろう、コンビニの炭酸飲料の事例に限らず。そんなときはかなりの落胆が伴い、とりつかれたようにそれを探し回ってしまうものである。そういうことに備えて自分の「好きだ」というものを蓄えておくしかないのであろうか。かといって具体的には炭酸水を何カートンも備蓄、というのはイマイチ現実的ではない。さてさて、どうしたものだろうか、と考えていたらバチーンと、とある考えにぶつかった。

もしかしたら、あれか。コンビニの品揃えの移り変わりの激しさは、そういう消費社会における、うつろいゆく「好きだ」というものではなく、言い換えれば「モノ」ではなく、もっと普遍的な、心の寄る辺となる「好きだ」というものを自分の中に持っておけ、というある種の教えのようなものなのであろうか。消費社会の権化たるコンビニでそういうことを教えられるとはなんとも皮肉なものであるが、実際そう店先で悟ってしまったのだからしょうがない。人間、解脱のヒントというものはいたるところに転がっているものなのだろうか。

とか仕事帰りに考えたりしてしまう、ってことは疲れている証拠なのだろうか。認めたくないがThe Magnetic Fieldsの「i」を聴く。Nonsuchからリリースされてびっくりたまげた2004年のアルバムである。元々Mergeとかからリリースしていた米インディポップ最後の大物、Stephin Merrittのユニットである。エレポップにクルーナー的美声、美メロ、そしてめちゃくちゃにひねくれた歌詞、というバランスの悪いところでバランスが取れていたユニットであるが、今作ではエレクトロニクスは最小限に抑えられ、ストリングスや生楽器を中心に全体を構成している。かといってこれまでの世界と随分違う、ということもなく今までの路線をヴァージョンアップした結果こうなった、という自然な流れが感じ取れる傑作である。絶対性格悪いんだろうなあ、とか端々から感じられるのだが、それがThe Fall的な方向には行かずに、実に耳なじみの良い、否、良すぎるような世界に突入しているのだからある意味極めた、と言っても良いのだろう。今作の後にはこの名義でのリリースはなく、ソロでの劇伴音楽、別ユニット、でのリリースが続いているだけに、ここらで一発、The Magnetic Fieldsの新作が聴きたいところではある。いつなんどきでも聴きたくなる私の1曲「I Don't Believe You」収録。