Either Way

よく街中で、電車の中で、ブックオフで、近所のコンビニで、またどこかのコンビニで、スーパーマーケットで、路上で、ラーメン屋で、ファミレスで、そう、至るところに神の如くオムニプレゼントな状態で、上下スウェットにサンダル履きの女子、というものを見かける。この間などはペアルックで歩く男女スウェット上下カップルを見かけたりもした。しかし何故か女子が多い、ように感じる。

一昔前は変な犬の刺繍の入った、白いジャージが結構定番だったようであるが、最近見かけるのは何の変哲もない、素朴なグレーのスウェットである。何だろう、シンプルイズベストな、ロハスな感じの流れがこういうところにも来たのであろうか(←バカ)。

しかし、無防備や過ぎないか、と私は思うわけである。とくに裸足にキティちゃんのサンダルで電車とかに乗っている女子に関して言えば。本当に無防備の極みのようなものではないか、と思ったりするのである。確かに楽な服装ではあろうが、それにしてもそのユルさはないだろ、と思ったりするのである。ましてや、今では日本も危険である。外は怖いものが一杯なのである。そんな中、世の中の流れに逆行するように無防備な方向へと突き進む彼女達にはどこか毅然としたものを感じる、って嘘であるが。

もう実は外界は危険すぎるので、逆に一回りしてそういう格好で出歩いているのであろうか。キリンは高いところの餌を食べるために首が伸びたわけであるし、実はこれは一回りした上での進化の成れの果てなのであろうか。2007年に日本で生きる、ということはこういう格好が最適、という進化の行き着くところまで行った証なのであろうか。

まあ、別にどうでも良いのだが、そういうスウェット上下女子からは何故か皆共通して同じスメルが漂ってくる(物理的に、ではない)のもまた、デカダンの極地的な感じで、進化というか退化というか。と色々下らないことに思いを馳せて夜は更けていく。Wilcoの「Sky Blue Sky」を聴く。3年ぶりの新作である。この3年の間にライヴ盤が出たり、メンバー各人のソロ活動があったり、Loose Furがあったり、と異常に活発にみんな活動していたせいで名前を聞かない時はなかったように思えるが、実は3年ぶりの作品である。メンバーが2人増えたりしているが、果たして出てきた音は、これがまたとんでもない、ありえない音楽なのだから腰が抜けた。運転しながら興奮した。前2作に於けるJim O' Roukeとのやりたい放題ロックを経て、今回はすっきりと、シンプルにコンパクトにまとまった非常にポップなアルバムである。落ち着いているし、ヴォーカルもメロディも甘さが強めで実に心地よい。しかし。だがしかし。ギター2本の絡みが尋常ではないテンションで絡みあうのでうかうか落ち着いても居られない。ギターが入ると突然曲が変わってしまったかのごとくに温度差があるのでまずそこの差異にビビるのだが、よく聴けば何だかヴォーカルの処理の仕方も変だ、否、全体的に地に足のついたアメリカンロックなのに、どこか浮世離れした音が鳴っている。アクースティックギターにラップスティール、なんていう思えばカントリー色が濃いバンドだったんだよなあ、ということを思い出させてくれるナンバーにしても、明らかに過去とは違ってネクストステージに突入してしまっている、不気味なアルバムである。曲の展開とかかなりムチャクチャなのに全てをサラッと聴かせて結果的には「聴きやすい」アルバムになっているのだから一体何なんだこれは、と疑問だらけだが、それは決して悪い意味ではなく、それだけ解いても解いても謎が出てくるような、深いアルバムだ、ということである。でJeff Tweedyの今作に於けるヴォーカルを聴いていて、ふとRoddy Frameを思い出したりもしたのであるが、彼もこういうアプローチで作品を作ってみたら意外に面白いだろうになあ、と余計なことまで考えてしまった次第である。