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さて、最近は 中古盤、というよりは新譜を聴くのがとても楽しい日々である。

で、仕事が終わってから帰宅する前に夜、大手外盤屋に行くことが多いのである。そこはたまにアナログ盤も置いているので12インチとか7インチとかを見るのも楽しい。

ということでそこで先日Digitalismの12インチを買おうかどうか悩んでいたのだが、ふと突然、「自分が今本当に聴きたいのはコレではない」という考えが突如降って来たので買うのを止めたのである。

では今何が聴きたい12インチなのか、と言えばGudrun Gutの12インチであり、Padded Cellの12インチであり、Andy Weatherallの以前出た12インチなのである。それは店頭にはない。ネット上にあるのである。

極力私は店頭での購入を中心にしているのであるが、こうなってくるとなかなかそうも言っていられず通販かなあ、とか思ってしまうのである。だからと言って「地元の店ではなんで入れないのだ」とかそういうことを言うつもりは毛頭ない。全てのリリースを全ての店で入れているわけではないのであるからして、自分が欲しいものがその店で入れていないものであるからと言って店を責めることはできないはずである。最大公約数のものが店には並ぶわけである、往々にして。だからDigitalismの12インチがよく売れるものと判断されて入荷していても、Gudrun Gutの12インチが入荷していないのは、実に至極当然のことなのである。

でも、ちょっと昔と比べると地元の小さな輸入盤店の、とくに新譜に関する頑張りが見られないのがとても寂しいところである。今では中古盤屋も値段をつけるのにebayやらYahooオークションやら参考にしちゃう時代だから、面白みがないといえば面白みがない時代である。だからこそ店頭で、新譜で唸らせられたい、というかワクワクしたい、と思ったりもするのだが、こんなにネット上で商品が溢れかえってる時代なら、それも最早難しいのかなあ、と思ったりもする。そもそももしかしたらこういう風に思ってしまうことすら、よく理解できない、という世代だって居るかもしれない、というかいるはずである。時代の流れはちょっと最近速すぎて、なかなか30過ぎにはついていくのが難しかったりするのである。

まあ前にも書いたが単なるノスタルジーになってしまうのかなあ、とちょっと切なくなりながら「A Tribute To Joni Mitchell」を聴く。かなり豪華メンバーによるトリビュート盤である。何せEmmylou HarrisにPrinceにCaetano Velosoである。そしてElvis CostelloにK.D. Langである。更にはBjorkにSufjan Stevens、Cassandra Willson、Annie Lennoxとその他にもがっつり、である。既発のカヴァーと新録が混ざった構成であるが、これまた実に良いカヴァー集でついつい聴いてしまうのである。思いっきり常軌を逸した解釈のカヴァーはここにはなく、比較的大人しめ、落ち着いたカヴァーが多い。唯一若手代表的なSufjanさんが穏やかながらも意表をついたアレンジでやっているのと、Caetanoさんがブラジルの風を出しながらしっとりとカヴァーしているのが耳を引く感じである。でも、当然ながら原曲が良いのでそれを素直にカヴァーするだけで良くなるのは当然のことなのである、というつまらない結論に達せざるをえないほど、凄くまっすぐなトリビュート盤である。私は彼女のアルバム全部を聴いたわけではなく「Court And Spark」コート・アンド・スパークと「夏草の誘い」夏草の誘いがフェイヴァリット、という偏った傾向の持ち主であるが、そんな私が、あのアルバムも聴いてみようか、いやこれも聴いてみようかな、と思わせられる。つまりJoni Mitchellファンにとっては勿論のこと、実は入り口としても最適なアルバムなのかも知れない。個人的にはPrinceの美しいカヴァーと原曲に忠実なK.D. Langのカヴァーが実にグッと来た次第である。