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昨夜、仕事を終えて車で帰宅途中に、ふと目の前をタルく走っている車が目に付いた。

勿論、走りがタルかったのが大きな理由だが、ナンバープレートが自分で選んだ番号で「326」。そう、326なのである。よく見ればご丁寧にリアウィンドーに彼の絵のステッカーが貼ってある。

あの新世代あいだみつをとして人気だった彼をいまだに愛しているとは、素晴らしい、というか奇特、というかバカじゃねーの、とか思ったが何よりもそのタルい走りが気になった。タル過ぎるから追い抜いたが、シートベルト非着用のランプがダッシュボードで点滅しているのが見えた。まあ、その程度なんだろうな。

否、個人的な話で申し訳ないのだが、彼の絵が盛り上がった当時、あの薄っぺらい言葉とどう解釈して良いのやらまったくわからないイラストにかなりイラッとさせられていた気持ちが甦って、全然自分とは関係ないことなのにかなり攻撃的、且つ荒んだ気持ちになってしまったのだった。何故か知らないが生理的な嫌悪感を抱かせる、という点では彼の生み出したものは凄かったな。ということで「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」状態で前のタルい走りしてる車にまで呪詛の念を抱かざるを得なかったのだった。まだまだ私も青いのう。

Feistの「The Reminder」を聴く。間にコンピを挟んでセカンドアルバムである。ファーストはめちゃくちゃ聴いたなあ。フレンチカナディアンの彼女のちょっと不思議な声(くぐもっているような、それでいて澄んでいるような)とポップで感傷的なメロディと、これはただものではない、という表面的には素朴なのに考え抜かれたアレンジが大層心地よく、一時期ずっと聴いていた。で、このセカンドであるが、相変わらず制作陣にはGonzalesがおり、加えてMocky, Jamie Lidellなどあの界隈の方々も参加している。で、出てくる音が、前作とはちょっと傾向のちがう、もっと生々しい音なのでびっくりした。前作がある程度面取りしたような感触の音だとしたら、今作は(あえて)ざらざらのままで提示してきたような、そういう感じである。ただそれでも単にざっくりとした音なわけではなく、やはり音の隙間だの何だの、これは計算されつくしてるんだろうなあ、という臭いプンプンの感じである。加えてメロディが前作以上にドラマティックな感じで盛り上がる。まあ、何と言ってもこういうざっくりした音にも映える彼女のヴォーカルが何よりも聴き所であるのに間違いはないのだけれども。Nina Simoneを下敷きにしたナンバーもあって、決して飽きることなく楽しめる傑作である。意外にありそうでなかったアプローチなので凄く新鮮な感じがして、そこがとても良い。