Now I Wonder

日頃花など愛でる感じではない私ではあるが、今日は県南の方まではるばる桜を見に行ったりなぞしたのであった。まあ、私1人では行こうとも思わなかったし、別になあ、という感じではあるが、それは渡世のしがらみ、というものがあるのである。

そこは川沿いにどばーっと沢山桜があって、橋を2つも渡って一周すれば桜の回廊、というものを体験できるらしく、約1時間くらいかかると書いてあったのだが、変に健脚ぶりをアピールしようと頑張って50分切る勢いで周ってきたのであった。

しかし桜は良いものだね。近くで見れば近くで見たで何とも趣があるし、遠くで見れば見たでなにやら薄いピンク色のもやーとしたものが見える感じで何か風流であるし。咲いている期間が短いというのもその刹那さが何か魅力を付加しているようで心に訴えるものである。

とたまには自分がまだ真人間の心を持っているかどうかを確認する必要があるのだ、私の場合はとくに。すぐにどっかへオーヴァードライヴしてしまいそうになる今日この頃だから、桜を見て良いね、と思えるかどうかを確認する必要があるのだ。ただの花見、というわけではないのである。

別に気取るわけでも格好つけるわけでもないし、大袈裟にアピールしようというのでもないのであるが、結構私も精神的にギリギリだなあ、と思わせられることが多々あるわけである。そういう時は視界が狭くなって何も見えなくなりがちでどうもいけない。桜の季節はとくにそうだ。だから桜も実に良いタイミングで咲いてくれるものであるなあ、としみじみ有難いのである。

とか何とか言いつつPaul Westerbergの「Folker」を聴く。2004年のアルバムである。ロッカー、ではなくフォーカー、というのが実に茶目っ気たっぷりで凄く良いなあ、と思うのだが。まあ、タイトルに恥じない、アクースティックギターを中心にしたゆったりしたナンバーが結構多目に入っている。しかしそれでダレることは当然なく、やはりゆるいようでいて、ビシッと背筋が伸びた音楽である。思えばThe Replacementsもそういうバンドではなかったか。しかしここではバンド時代よりもよりゆったりと、よりビシッとした姿が窺えるので実に頼もしい。Viva Saturn(覚えている方が少ないと思われるがThe Rain Paradeのメンバーによるバンド)とか故Chris Whitleyとかを想起させるようなシンプルで愛らしいメロディとラフな演奏で、本当に素朴と言えば素朴な、何の衒いもない音楽ではあるのだが、やはり曲の持つ魅力ががっつりと心を捕らえて離してはくれない、そんな日々必要とされる音楽である。