The Song Of Cain

結構お店のBGMはとても面白い。私なぞはついつい耳を奪われてしまう。レコード屋に関しては言うまでもなく、たとえコンビニであってもついつい、ほほう、とか思ってしまうし、ブックオフではたまに何故今これが、みたいな不思議に思えるものが流れていたりするし。松岡英明浜田省吾The Roostersが続けて流れた時には唖然としたものである。最近ヘッドフォンで耳を塞いで店の中を歩いている輩を見るが、何か面白いものとの出会いを積極的に避けているようなものだなあ、と思ったりする。まあ、一番解せないのはヘッドフォンしてCD屋に来ている輩であるのは言うまでもない。出会いのチャンスを自ら放棄しているというか何と言うか。

まあそれはそれとして色々な店で、たまに良い悪いは別にしてとても衝撃的なものが流れているときがある。有線だったらばまあ、なるほどそういう時もあるかも知れないね、程度なのだがCDなどを流している店では往々にしてびっくりさせられることがある。例えば我が職場の近くにとても美味しいパン屋さんがあってよく行くのであるが、今日行ったら来生たかおが結構な音量で流れていた。CDで流れていた。パン屋で来生たかお。良い悪いは別にして結構驚かせられる。

そしてちょっと話はずれるのだけれども、我が職場の近くに美味しいラーメン屋さんがあって、良く行くのであるがそこではAMラジオが流れている。それはそれで良いのだが、ラジカセの隣にはCDが置いてある。坂本冬美、春日八郎、鳥羽一郎オレンジレンジ天童よしみ北島三郎細川たかし・・・、む、オレンジレンジ・・・?何か間違い探しのようなCDの並びである。果たしてこの老夫婦のやっているラーメン屋でオレンジレンジが流れる日はあるのだろうか。

ということでTed Leo And The Pharmacistsの「Living With The Living」を聴く。元Chiselの彼の、この名義では4枚目のアルバムである、って今気づいたがサード聴いてないな・・・。それはそれとして、Touch And Go移籍第一弾、FugaziのBrendanのプロデュース作品である。この人の場合、ルックスに似合わぬ、甘い、よく通る、ソウルフルな声なのである。まずこれがポイントである。そして曲が過剰なまでにキャッチーでポップなのである。これも大ポイントである。そこら辺のポイントをしっかり押さえて、且つしっかりとパワーアップした音を聴かせてくれるからたまらないのである。元々「モッズコア」とか呼ばれてしまうようなChiselにいただけあって、ハードコアの心を持ちつつもそれに収まらない音を聴かせてくれるのは当然として、ここまでスコーンと抜けるような、「青い」音だと痛快である。相変わらず細かく転調して、普通だったら4曲分くらいのキャッチーなフレーズを1曲の中に詰め込む、まるで「鶏ガラ豚ガラ野菜などを通常では考えられないほどふんだんに煮込んでダシを取った」仙台っ子ラーメンのスープのような(わかりにくい例えで申し訳ない)過剰なまでにフックに溢れた、ポップすぎる曲は相変わらずで、最早お腹一杯である。それがワンパターンにならずに、遂にはレゲー〜ダブな曲までもが登場するに至ってはもうひれ伏すしかない。絶好調ぶりが伝わる大傑作である。世の中を皮肉に満ちた視点で切っていく、まるでBilly Braggみたいな痛烈な歌詞も健在である。ちなみに日本盤にはボートラでStiff Little Fingersの「Suspect Device」のライヴカヴァーも収録。