No Pussy Blues

ピクシーズ ラウド・クワイエット・ラウド」という映画を見てきた。

まあ、映画、というか彼等の2004年の再結成ツアーの様子を追ったドキュメンタリーフィルムである。まあ、この再結成自体が結構びっくりだったのでそこら辺の事情が知れる、という意味でも興味の持てる映画であった。

何せメンバー間の中が悪かったのが解散の第一理由と考えられていたバンドだけに、何で再結成できたのであろうか、というのがまず誰もが思ったことであろうが、そこら辺もサラッと描かれていて、あららさほどドラマはなかったのだろうか、という感じである。まあ、いまだに決して全員仲良し、という感じではないがまあ、普通にコミュニケートできるようにはなっているようだ(途中ちょっとあるみたいだが)ということがわかった。

各メンバーの今の生活ぶりも紹介されていて、なんて様々なんだ、ととても面白かった。ちなみにドラムのDavid以外、皆格段に巨大化していてそこら辺もああ時間は流れたんだなあ、という思いが頭をよぎった次第である。しかしKim Dealがドラッグとアルコールのリハビリ施設に入っていたのは知らなかった。それって双子の姉妹のKelleyの方じゃなかったのか、と思ったが実際2人ともそうだったらしい。この2人の姉妹はいまだに仲良く、再結成ツアーも一緒に回っていて、この2人の支えあう関係がまた面白かった。

ライヴの模様もちゃんとフィーチャーされていて、全盛期そのままのテンションで次々御馴染みのナンバーが演奏されていくのには興奮した。まあ、早い話が映画、という感じではないのだけれども、それなりにドラマがあって、編集もしっかりしていて、そしてスコアをDaniel Lanoisがやっていて、それがまた凄く良かったのであった。スコアだけのサントラが欲しいくらいである。

とか色々書いているが私の中学高校時代の大事なバンドであるだけに、何か、おおこんなにビッグな存在になったんだなあ、という何か生意気な感慨を覚えたりもしたのであった。それが一番大きいかも。だってデビュー当初は「Steve Albiniプロデュースで4ADからのリリースでThe Fallみたいなポップセンスのあるひねくれたロックバンド」みたいな登場の仕方だったので、多分私の中ではそこで止まってしまっているのかも知れない。だから映画になるだなんていまだになんかピンと来ない、というのが正直なところでもある。まああくまで個人的な意見、というか思いいれの話なので別にどうでも良いのだが。

ということでGrindermanのアルバムを聴く。Nick CaveがThe Bad Seedsのメンバー中3人と一緒に組んだ新プロジェクトである。別にThe Bad Seedsがなくなるわけではなくて、この編成でちょっとやってみたら面白かったのでアルバムも出すことになった、という感じのノリのようである。しかし考えてみればメンバーは元Teenage Jesus And The Jerksに元The Triffids、そして現Dirty Threeでもあるわけで、そう考えるとありえない豪華メンバーのバンドだな。何でもインプロヴィゼーションをベースに曲を組み立てていったらしく、近年(ここ10年くらい)のNick Cave And The Bad Seedsでは影を潜めていたむやみやたらに勢いのあるロックンロールぶりが楽しめる。最初は、グダグダだったらどうしよう、とちょっと危惧していたのだが思いっきり杞憂であった。攻撃的なエレキギター(Nick Cave本人が弾いている)やらが幅を利かせ、様々に不穏な音が入っているが、しっかりとした演奏でぐいぐいと飛ばしていく。そして実に面白いことに、こんなにラフで攻撃的な音なのだが何故かやはりどうしてもThe Bad Seedsと同じ空気が漂っているのが不思議だ。しかもアルバムが佳境に入ってくればくるほどそれが強まるのである。むー。ということで当然ながらNick Caveの初期が好きな人も近作が好きな人も、多分どちらも気に入ることであろう、大傑作。メロディもしっかりしていて実に聴きやすいくせにとんでもなく荒っぽい、そのくせしっかり作られた風格の漂う不思議なアルバムなのである。