Sweet Jane

最近、何か部屋を見てはよく考え事をする。何だこの何かに取り付かれたような部屋は、と思いながらである。

明らかに過剰である、CDがレコードが。実家に住んでいた時には私の部屋には文字通り床がなかった、足の踏み場がなかった。帰宅して部屋の扉を開けてからベッドまでジャンプしてベッドの上で着替えして(机の上も椅子の上も最早物置)、ベッドの上でレコード聴いて、そのまま寝て、というSoft Cellの「Bedsitter」ではないがベッドの上が私の国、というような生活をしていても全く意に介さなかった私であるのに、である。

やはり下手に整理整頓してしまうと、逆に目だってしまうのである。別に目だっているから気になるわけではないと思うのだが、果たしてこの中には私に必要なものだけしかないのだろうか、と考えてしまう。そうなってくると火がついてやれ整理整理、と言って次の世代に託すものを選んで全体数を減らしてしまうのである。

やはり枚数が多くても聴きたくなるものは決まってくるし、新しく心奪われるものがそこに追加されていくとやはり限界が来てしまうわけである。だから最近我が家のはなかなかに削ぎ落とされたセレクションになりつつあると思うのだが、どんどんモテないようなものばかりになってきているような気もする。まあ、気にしないでおこうではないか。

で、昔買った音源を引っ張り出しては聴く、という方まで気持ちが向くようになってきて、それがまた面白いわけである。レコード聴いて面白がるのはなかなかやっぱり止められなかったりするわけである。そして昔のに気が向いたりもしているにも関わらず、今日もAll Saintsの12インチとかKlaxonsの12インチ×2、等が到着してしまったりするわけであるし。終わりがないのだなあ・・・。

ということでLou Reedの「NYC Man」を引っ張り出して聴く。ほら、昨日「イカとクジラ」で聴いてしまったりしたわけだし。これは本人監修による、VU時代からの彼のキャリアをざっとおさらいできる2枚組ベストである。リリース当初はまたこんなベストかよ、とか思ったりしたものだが、なかなかどうしてジャストな選曲で結構聴きこんでしまう。彼の場合、名曲しかない(・・・と断言するのが憚られてしまうものもあったりするのだけど)わけだから安心して聴けるのだが、このベストに於いてはとにかく音が良い。流石インタヴューでも音質のことしか喋らない男である。「I'm Waiting For A Man」なぞ衝撃的な音の立ち上がり具合だし、たとえ89年くらいの作品であってもドカドカの音に生まれ変わっていて驚く。その点だけでも素晴らしいし、勿論楽曲も素晴らしい。彼の場合、どこか毒々しい感じが全体的に漲っているのに、必ずホロリ、もしくはドキリ、もしくはグサリ、という瞬間がある。とくにこのベストでは凝縮されているので濃度は高い。だからこそ良い音質で聴くとその効果は倍増なのである。彼の呟きのようなヴォーカルも、喋っているようなヴォーカルも、全て私の心を素手で掴んでさすりまくっているような、そういう生々しさがあるし。しかし「White Light / White Heat」のライヴヴァージョンでのRobert QuineのギターとFernand Saundersのフレットレスベースの絡みは最高だなあ・・・、とか何百回も聴いているはずなのに思ってしまうのだった。ほら、なかなかやっぱりこういうのは止められないのである。