West End Pad

ところで、皆さんは自分の体毛を見ていて、ふと気づいたりすることはないだろうか。

私の場合、今現在皮膚病であるし、昔おかしかった皮膚の部分もある。そういうところを見ていると、何故かそういう部分から生えているものは他のに比べ、黒く太く逞しい。しかも他の部分の毛と異なり、立っている角度が違う。角度が大きく、ピンと屹立している。

また、そういえば高校の頃生物の実験で、指を焼いたことがある。別にこれは「指を焼く」という実験ではない。そんな拷問はそういうのが好きな人がやれば良いのであって、少なくとも高校のカリキュラムに入れてはいけない。確か無菌状態の箱の中で、指をアルコールで消毒した上でマッチに火を点けて炎を見るだか何だか、私にしてみれば別に興味のない実験であったが、マッチを擦ったら引火して、左手の薬指がボっと燃えたのだった。お陰で指の毛はちりちりに焦げてしまったのだが、その後生えてきた毛の逞しさ、太さは特筆すべきものがある。いまだにちょっと左手の薬指だけ毛が濃かったりする。まあ、あくまで比較的、の話であるのだが、

そう、逆境に耐え、その逆境を越えて生きようとする毛は逞しい。それにひきかえなんだ自分は、これは毛からのメッセージでそんな逆境をものともせず乗り越えてみろということなんだな、とかって解釈する人間がいたら、その人はちょっとおかしいと思うのだけれども、何か辛いことがあった後は、やはり人間というものは己の体毛のようにより逞しくなっているのであろうか。むむ、やはり人間の身体の自然治癒力というものはドデカイものなのだなあ。心の自然治癒力は果たしてどうなのか。その自然治癒力はもしかしたら「忘却」というものになって存在しているのかも知れない。忘却の末に一回り逞しくなった心が得られるのだろうか。

とか思いつついるが、別に何があった、とかいうわけではなく、単に思いついただけである。Cathy Dennisの「Am I The Kinda Girl?」を聴く。現在はKylie MinogueBritney Spearsへの曲提供などで売れっ子の彼女の96年の作品である。それまでの作品がかなりダンスポップよりで、どっちかというとちょっと軽薄な感じがしたものであるが、この作品は元Burmoe Brothers(詳しくは知らないのだが、シングルではMarc Almond様が歌っていらっしゃったりした)〜元World Party〜元Lemon TreesのGuy Chambersとか、XTCのAndy Partridgeとかが彼女と共作としていて、かなりそれまでと趣の違う、正統派UKポップスと考えられる音楽を奏でている傑作である。音も変化していて、しっかりとしたバンドサウンドだったり、打ち込みを用いていてもドラムスの代用的な感じの用い方で、実に自然な感じになっている。彼女は元々ヴォーカルも表情豊かであるので、こういうサウンドにはどんぴしゃである。バックも元Prefab SproutのNeil Contiがドラムスだったり、と結構何も言うことはない感じのメンバーでしっかりとしている。で、Kinksの「Waterloo Sunset」のカヴァーもやっているのであるが、これがめちゃくちゃ泣けるカヴァーになっていて、久々に聴いたら異常に心に直球ストレートでやられてしまった。ブリットポップ期に出てしまったが故に、あまり話題にもならずに終わった作品であるが、とてもよく出来た女性ヴォーカルUKポップスの名作である。ギターポップ、とか言っても良いかも。なのに今ではどこで見かけてもバカみたいな激安で叩き売られているので、是非この機会を逃さずに聴いて、評価してもらいたい!とか珍しく大きく訴えかけてみる。