Golden Skans

私は、下手の横好きのレヴェルはまだまだ脱しないものの、お料理はかなり大好きである。でも、カレーにはあんまりハマってないなあ、という感じだったのである。

しかし。だがしかし。

先日、前回作ったときは水っぽくなってしまったので今度はがっつりと、とルーを使わぬ(つまりルーまで作っちゃう)チキンカレーに挑戦したわけであるが、ちょっと余裕があったのでチリパウダーだターメリックだ七味唐辛子だニンニク醤油だ、と色々我が家の台所にあったものを実験的にちょこちょこ入れて、さらに料理本よりも時間多めに煮込んでみたりしたのだった。そうしたら、出来上がりが前回とは格段に違うのだ。自画自賛も甚だしいのだが、むちゃくちゃ美味しいのだ。隠し味(というか私の実験魂の所産)が効いているのかどうかはいまいち判別できなかったのだが、たぶんこの味わい深さは我が実験の成果なのではないか、と思うと、深い。深すぎる、カレー。

で、それ以来暇あるたびにカレーのことばかり考えている自分がいるわけである。玉ねぎを炒める際にはもうちょい火力が弱い方が良かったかな、とかこれまではチキンしか具材を入れていなかったので、今度は何を何を入れてみようか、カレーに入れる前に軽く表面を焼いたナスとかじゃがいもとかかな、とか今度はちょっとインスタントコーヒーを混ぜてみようか、チョコレートも良いな、あ、ヨーグルトとかもアリだな、とかもう本当にカレーのことばっか考えて1日が終わっていく。嗚呼早く作りたい!ってこれは病気じゃないのか!

でも、このカレーの感覚ってなんか「工作」とかそういうものに近いように思う。自分が思うことを色々試してみたくなるのだ。しかもある程度、何でも飲み込んでしまう大らかさがカレーにはある。だから、これをやったらどうなるかな、とかこれを入れたらこんな感じかな、という実験をも受け入れてくれるわけである。嗚呼、やばい、また作りたくなってきた。

しかしこんなに日々グダグダと消極的に生きている私なのに、何かカレーとかに関しては異常に好奇心旺盛でやる気満々なのは何故だ。逃避?否、そんな愚かしい概念では語りえない。かといって仕事にするのもおこがましい。はっ、生きがい・・・?

何か予想以上に私の心の中でカレーが占める割合が大きくなりつつあることにおののきながら、Klaxonsの「Myths Of The Near Future」を聴く。なんかさー「New Rave」だとか「Klaxonsしか愛せない!」とか、そういう胡散臭いフレーズと共にここ日本では紹介されまくるから、ハイプな感じがしてちょっとなあ、と思っていたUK新人トリオのデビュー盤である。でも、これは良いではないか。確かにダンサブルな要素もあり、パンク的な瞬発力もあり、はたまたニューロマ(!)な香りまでする音ではあるが、大層完成度が高い。そして飽きずに聴けるのはとてもキャッチーなフレーズを持った、あくまでポップでメロディアスな楽曲が揃っているからだろうか。また、一番好感が持てるのは、色々な要素が入った音楽なのにそのどれか1つの要素に軽く依存したりしていない、そのバランス感覚の見事さかも知れない。だから色々混ざってるはずなのに、決して下品にはならずに上品にまとまっているところが凄く面白い。シンセなんかも普通はこの音色だったら軽く引いてしまうような音色が入ってきたりもするのだが、違和感なく収めているのには感心する。そういやJ.G.バラードの影響が、とか語っているインタヴューを読んだりもしたので、そこら辺のセンスも好感度大、である。今度はちょっとこのまとまり具合を逸脱するような感じも聴いてみたいな、と思わず欲張りな感想を持っちゃうくらいの充実したデビュー作である。