Suspended Season

皆さんには、「嗚呼この瞬間に歯車が狂ってしまった」と感じたことはないだろうか。私にはある。

後から振り返ってみて、嗚呼あの時・・・、というのは結構あるが、この間私はその「歯車が狂う瞬間」というのを体感したのであった。

「こってりと言えばこのコク、この濃度」だかなんだかとポスターでベッキーが言っている天下一品ラーメンで食事をしたのだが、食べ始めた瞬間「嗚呼、今日俺が食べたいのはこれではないのだ・・・」と瞬間的に悟った。

それだけならばまだ良いのだが、こってりの天一を食べながらも「嗚呼、ざるそばとかが食べたかったんだ俺は。真逆ではないか・・・」とか思い始めたのだからさあ大変。今まで食べながらそんなことを考えたことなどなかったし、そんなことを考えるだなんて想像もつかなかったのだが、現にそう思ってしまったのだった。

まさに歯車が狂った瞬間であった。その昼食後は、何だかやることなすこと全てがチグハグで、挙句の果てにはこってり天一のせいで夜には猛烈な腹痛に襲われた。昼食の選択を誤っただけでこんな1日になってしまうとは!

皆さんも昼食の選択には細心の注意を払った方が良い。その後の1日を滅茶苦茶にしてしまわないように。Maher Shalal Hash Bazの「L'Autre Cap」を聴く。オリンピア録音、Kレーベルからのリリースになる新作である。思えば「Faux Depart」などのリリースはあったものの「Blues De Jour」からは結構久々なことに気がついた。約3年ぶりか。その間にもライヴを見たりしていたのであまりブランクは感じていなかったのだが。で、この新作であるが、相変わらずの部分は相変わらずである。美しい、というか非常にストンと落ちてくるコード進行、メロディと、ブラスセクションをフィーチャーした「崩壊寸前」のアンサンブル(帯にこう書いてあったのだ)、そして工藤氏の時に丁寧な、時に素っ頓狂な独特のヴォーカル、と。また、おおずっと聴いていたいなこのメロディは!と思った瞬間に終わってしまう、極端なまでのあっけさなが全開の小曲もやはり多数ある。しかし今作は何故か、かつてないほどに生き生きとしている、というか動的な感じがする。それはギターのカッティングの歯切れの良さのせいかも知れないし、曲調のせいかも知れないし、Dub Narcoticスタジオでの録音のせいかも知れない。しかし同時に、良い意味でどこか居心地の悪さを感じさせるのは変わらぬMSHBの世界である。ところで今作ではベースの代わりにバスーンがベースラインを奏でているのであるが、これが普通のベースでは奏でないようなラインを奏でているので、どっしりとした音の基盤がどこにもなく、工藤氏のヴォーカルとギターを中心に全てが組み立てられているような感覚を受ける。そこら辺の音の寄る辺のなさが私には凄く面白く思えてしょうがない。思わず何回も何回も繰り返して聴いてしまう中毒盤。そして、日本盤はアルバム全曲を演奏しているライヴディスクが付いた2枚組なのだが、Jim O'Rouke等も参加した大所帯によるライヴはスタジオ盤を凌駕してしまうくらいのテンションでこれまた圧巻、である。スタジオ盤も勿論のこと、こちらのライヴ盤も聴くべき名演であろう。あ、明日は仙台でライヴではないか。勿論行く予定だが、果たしてこのアルバムからの曲群は演奏されるのであろうか。

ということで輸入盤と日本盤、両方のリンクを貼っておこう。