Colorado Bound

Harlem Shuffle Vol.2 2006.12.1.(Fri)@Club SHAFT (Sendai) 21:00〜 \2,000 ( 1 Drink )

●Guest DJ●
鳥井本英樹(SINDBAD)

DJs:tmym, tdsgk, Kenji Maesawa

club shaft::  http://www.clubshaft.com/
HIGHCONTRAST::  http://www.vividsound.co.jp/highcontrast/

よろしくお願いいたします↑

さて、珍しく今日は何も予定がない休みの日(こういう日は私の場合年に何回あるかないか、なのである)であって、連休の最終日である。折角なので無為に過ごすことは避けたい。できれば日頃やらないようなことを、と痛切に願っていたのでとりあえず我が家でDVDでも鑑賞してみようか、ということになった。

で、これ→エンジェリック・カンヴァセーション
を見た。Derek Jarmanの『The Angelic Conversation』を見たのである。これはヴィデオをお借りして、それをDVDにダビングしたものであるが、これを真昼間から見てみよう、という企てである。

ストーリーはとくになく、何か2人の若い男性が、水と戯れ、抱擁しあう様や、自然の風景やらを映した、ある意味淡々としたものである。この男性2人の絡みは、まさに男の世界、というかDerek Jarmanの世界、というかゲイ、というかクィアーの世界、というか、まあそういうことである。

ところで、Derekさんは、最近私は彼の著作を読み漁っているのであるが、闘うゲイ、という形容がぴったりくるような勢いでヘテロの世界に対してアンチを唱え、80年代後期にイギリスで施行された同性愛追放の、所謂「28条」という法律にも毅然と反対を唱えていたような方である。そういう映画を作ったとしても全く不思議ではない。しかし彼の場合非常にユニークなのは、それが直接的に映画に現れたりすることはほとんどない点である。唯一『Jubilee』が、「反抗的」というか「アンチ」的な要素が色濃く出た若干アナーキーな作品ではあるかも知れないが、それ以外ではそれを中心に据えたりすることはなく、この映画のように淡々と、無言の映画になったりするのである。彼の著作を読んで得た印象と映画の印象のギャップがまた面白く興味は尽きないのである。

と話がずれたが、この映画である。淡々とした、と述べたが、目を見張る映像の美しさで溢れた映画でもある。何でも8mmを35mmにブローアップしたらしい、面白い手法を使っているらしいが、全く何のことやら私にはわからない。しかし全体が荒い粒子で構成されたようになっており、また動きがスローモーションのような、静止画を何枚も連続して映しているような、そういう感じになっている。また、効果的に火であったり、反射光であったり、「光」が使われており、それが画面に一種独特の緊張感をもたらしている。シェイクスピアソネットの朗読が被さったり、また非常に効果的なCoilの音楽も相俟って、淡々としてはいるものの、思わず引き込まれてしまうものである。

まあ、好き嫌いはあるだろうし、中にはあまりにも露骨に同性愛色が出ているので苦手な方もいらっしゃるだろうが、この映像の美しさは見る価値大有りだろうなあ、とぼんやり思ったものである。しかしかく言う私もこれもし映画館で見ていたら、そして夜の上映だったりしたら間違いなく爆睡していただろうなあ、と確信した次第である。

ということで日頃滅多にしないことをやってみる、という企ては無事に行われたのであるが、自分で作ったスパゲティーを平らげながら、テレビでは『The Angelic Conversation』、というのは余りにも日常生活とモニターの中の非日常の乖離が激しくて、ちょっと訳分からなくなりそうであった。

Townes Van Zandtの「Live At Jester Lounge」を聴く。一部で盛り上がる(本当か)彼の1966年、テキサスでのライヴレコーディングである。このライヴではアクースティックギターのみ、たまにハーモニカが入る程度、という非常にシンプルなセッティングであり、結構カントリーブルーズの王道に則った音を聴かせている。結構若い時の音源ではあるが、声はしっかりスタジオ盤と同じで、ちょっと裏返る感じのある哀愁声であって、十分彼の世界が堪能できる。何でも酒場でのレコーディングであるらしく、結構軽い感じの「何とかかんとかブルーズ」なる曲名の軽快な曲群や、Hank Williamsなどカントリーナンバーのカヴァー、ブルーズナンバーのカヴァーなどヴァラエティに富んだ選曲でシンプルな演奏ながら、全く飽きることなく楽しんで聴ける。しかし、オリジナル曲数曲では沈み込むような沈鬱な色が濃厚で、それがまたたまらない。たまに彼の曲には病的なまでに沈みこむような印象があったりするものもあるのだが、この時点でしっかりその個性は発揮されているのである。アルコールによる早死に、という彼のちょっと悲劇的な人生のことも重ね合わせると、ちょっと物悲しくなったりする秋の夕暮れなのであった。