All My Fabres

日頃家では夕食時に缶ビール(というか発泡酒)の500ml缶半分程度、という慎ましやかな飲酒ライフを送る私である。まあ、そんなんだがたまに飲み会なんかでは激しく飲みすぎ注意報になってしまったりするのだが。

ということで自宅飲酒はかなり少ない私なのである。しかし先日ウィスキーと焼酎をいただいてしまった。飲まないでおくのもまさに宝の持ち腐れなので、飲んでみることにした。

しかし何せ日頃が上記のような体たらく、たまにちょっと飲んだとしてもビールを350ml程度、というわけであるからまさに初体験(自宅では)の晩酌なのである。

まあ、ウィスキーは大好きであるし、焼酎も大好きであるが外で飲むときにはもう良い加減酒が回ってから飲んだりしていて、もう訳分からん状態になったりしているから(まあ、それはそれで問題なのであるが)ツマミのことなぞあまり考えたことはなかった。とくにウィスキーを飲むのは、私が世界最高の飲み屋と考える「天狗」でバーボンロックと黒ビール、なんていう激しい勢い、もしくは世界で2番目に好きな「PRONTO」でハイボールで、というさらりとした勢い、なのでつまみ云々、ということとは最早無縁だったわけである。しかし上記飲み屋名だけでも、いかに私が市井の民であるか、ということが如実に窺えるなあ。

さて困った。今日はみょうがの酢漬けと青なんばんのじゃこ和え、サラダとヨークベニマルで買ってきた焼き鳥、である。試しにこれをツマミにウィスキーを飲んでみたが、そういうことではないだろう、という思いが募り、最終的にはウィスキーのロックと柿ピー、というまさにリアル宅飲みモードになってしまったのであった。

まあ、悪くはない。しかし。だがしかし。何かもっとベストマッチングなものがあるはずである。多分大人の男性向けの、私にしてみれば非現実的な金額の商品が羅列されて紹介されているような雑誌を読めば、イカした店のイカした酒とイカしたツマミが載っているはずであるが、当然のように我が家にはない。『銀星倶楽部』になぞ載っているわけないし、『ku:nel』にも載っていない。ましてや『WIRE』なんかにも載っていない。あれかレバーのスモークとか、キャビアの何か、とかなのか?否、そういう非現実的なものではない、何か身近にあってベストマッチング、とくにウィスキーと、のツマミを探す旅に出なければいけないようである。

恐らくここをお読みの方々でもお酒に関して一家言ある方はいらっしゃるであろうから、お知恵を拝借いたしたくここに記したわけである。まあ、今はツマミも何もない状態で横にウィスキーのロックの入ったグラス置いてこれを書いているのであるが。そろそろ飲みすぎ注意報発令が近いように感じるのでここらでお開きにしなければ。

ということで強いて言えば今のツマミは「Signals For Tea」という1995年作「洒脱なジャズアルバム」(帯より)である。これはベストマッチである。まあ、面子はSteve BeresfordとJohn Zorn、そしてマサダの面々、という仰天なメンバーであるが。しかし実際洒脱なジャズヴォーカルアルバムなのであるこれがまた。歌うはSteve Beresford。まさかCompanyに於いてはピアノの蓋を開け閉めするだけ、もしくはウクレレを櫛でこすって即興、とか風呂場でゴボゴボレコーディング、とかOn-U関連作でぶっといベースを弾く彼がこんなに素敵な、本当に素敵な美声と洒落たピアノでもってリーダーアルバムを作っているとはなあ。そしてJohn Zorn以下マサダの方々も実にツボを抑えた4ビートの、真っ直ぐな「ジャズ」を聴かせてくれる。時たま「あそういえばこのサックスJohn Zornだったな」と思わせる激しいブロウはあるが、本当にたまーに出てくる程度で、多分我が家にある彼の作品の中で一番に衝撃的な作品である。何かあるんじゃないか、とか裏を読みたくなる気持ちも多々あるだろうが、この作品に於いては何かそういう深読みの態度よりも、素直に享受して楽しむことが絶対に正しいと思う。多分我が家にある「ジャズ」と目されるであろう音源の中で一番、飲み屋とかカフェとかでBGMとしてかかるような「ジャズ」というものに近いCDである。これを聴きながらお酒だなんて、自分お洒落じゃね?と間違えて思い込んでしまいそうになる危険性もある。