A Star Is Born

もし世の中に、「金になること」、と「ならないこと」、という2つの考え方しかないのならば。

私は「金にならないこと」にばっかり血道をあげているなあ、と思ったのだった。飽くまで世の中の物事を上記の分類法のみで考えるのならば、である。

本当に金にならないことに対する情熱は大したものだと思う。日頃生き死にに関係あるかないか、という分類法で生きている私ではあるが、もし上記の分類法で考えるならば、金にならないことに関する頑張りは自分でもなかなかだとは思う。寧ろ「金が出て行くこと」、というか何と言うか。

もしその情熱を「金になること」に少しでも向けていればかなり良いのだけれども、どうもそこまで人間が器用にできていないようで、何をしたら良いかちょっと考えてみても、全く思いつかない。むー悔やまれるのう。

しかし本当に「金になること」「ならないこと」だけで考えている人、それも仕事のことだけでなく生活に於ける全てのことに関してそのように考えている人がいるのならば(いや、多分いるのだけれども)、それほど世知辛いものもないであろう。やはり私のような人間がいるから世の中上手く周っているんだろうなあ、などと本気で一瞬思ってしまって今日はヤバイかも知れない。

まあ、私の「生き死にに関係ある」「関係ない」という分類法もなかなかどうなのやそれって、とか思うがこれだと大抵のことは気にならなくなるので自分にとってはしっくり来るなあ。悟り、なのか。実は人間誰もが自分自身の分類法というものを知らず知らずのうちに身に着けて、それに従って生きているんだろうなあ、とか思う初秋の夜であった。

高橋幸宏の「Blue Moon Blue」を聴く。私はあまり熱心な幸宏さんのリスナーではなく、この2006年3月リリースのアルバムも何故か突然最近気になって聴いている。彼の80年代〜90年代のベスト盤を聴く限り、ちょっと閉鎖的、且つ濃密な世界が展開されがちな(勿論ほっこりとさせてくれる可愛らしい曲もあってそれがまた素晴らしいが)ソロ活動であったのかも知れないが、今作は非常に風通しの良い作品でとても気に入っている。エレクトロニカ、って言うんですか、フォークトロニカ?トイトロニカ?もう何がなんだかわからんが、そういう意匠が全編を貫いているが、一貫して優しげな、そして凄く体温の感じられる音楽である。幸宏氏の震えるヴォーカルもしっかり堪能できるし、Her Space HolidayやらMarz、細野晴臣にSteve Jansenというゲスト陣もすっかり溶け込んでいて心地よい。ほぼ全曲英語詞であるが、それも凄く自然である。今の幸宏氏にとって無理のない音楽をやったらこうなった、という感じなんだろうなあ、とひしひしと感じられる充実作。Brian Eno&John Caleのカヴァーもずっぱまりである。このアクースティックギターやらなにやらの音の抜き差し具合がとても絶妙なんだよなあ。